寺社・文化財

上賀茂神社と下鴨神社の本殿

檜皮葺の屋根の前側が長く流れる社殿が2棟並び、境内に円すい形の砂の山(立砂)が一対ある神社を描いた切り絵風イラスト。背景に深い森と小川

要点

  1. 国宝は上賀茂の本殿・権殿と下鴨の東本殿・西本殿の4棟

  2. 1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定

  3. 直近の式年遷宮は2015年(平成27年)。上賀茂は第42回、下鴨は第34回

  4. 下鴨の2柱は、上賀茂の祭神・賀茂別雷大神の母(玉依媛命)と外祖父(賀茂建角身命)

国宝の4棟

上賀茂神社の正式名は賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)、下鴨神社は賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)です。国宝はそれぞれ2棟で1件で、4棟とも1863年(文久3年)の造替、形式は三間社流造、屋根は檜皮葺(ひわだぶき)です。

上賀茂神社では同じ形・同じ大きさの社殿が東西に並び、東が本殿、西が権殿(ごんでん)です。権殿は常設の仮殿で、式年遷宮のときに仮の本殿になります。下鴨神社は東本殿に玉依媛命(たまよりひめのみこと)、西本殿に賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)をまつります。

造替の年には、孝明天皇が攘夷祈願のために賀茂社へ行幸しています。両社の本殿は1901年(明治34年)に特別保護建造物となり、1953年に国宝になりました。京都市内の国宝建造物のうち、社寺の建物ではもっとも新しい年代です。建物の指定は、上賀茂神社が国宝2棟・重要文化財41棟、下鴨神社が国宝2棟・重要文化財53棟です。

流造の形

流造は、切妻造(きりづまづくり)・平入(ひらいり)の屋根の前側の流れを長くした形です。賀茂両社の本殿は、桁行(けたゆき)三間・梁間(はりま)二間の身舎(もや)の前面に三間の庇(ひさし)を付け、屋根の前面を庇までゆるやかに葺きおろしています。四方に縁をめぐらし、正面に向拝(こうはい)を付けた形式です。

流造は全国でもっとも広く分布する神社本殿の形式です。上賀茂神社の本殿は1303年(嘉元元年)ごろの造替のときと大差ない姿であることが分かっており、まったく同じ形式の下鴨神社の東西本殿とともに、流造の典型です。

同じ国宝の本殿でも、北野天満宮は本殿と拝殿を石の間でつなぐ権現造、八坂神社は本殿と拝殿を一つの大屋根で覆う形で、つくりが異なります。

流造(ながれづくり)の本殿を横から見た模式図

左を正面とした神社本殿の側面図。中央から右に柱で区切られた身舎があり、その左に庇が張り出している。屋根は頂の棟から右(後ろ)へは短く、左(前)へは庇の先まで長くゆるやかに流れ下る。建物の下には縁がめぐる。
左が正面です。
北野天満宮の本殿と八棟造

21年ごとの式年遷宮

式年遷宮は、一定の年限ごとに社殿を造り替えて神さまを移す行事です。賀茂社では1036年(長元9年)に21年ごとの式年遷宮が定められました。戦乱などで間があいたのち、1628年(寛永5年)に上賀茂、1629年(寛永6年)に下鴨が再興され、平安時代の姿が再現されました。

下鴨神社の本殿の造替は1863年が最後で、今は21年ごとに、傷んだところを修理するため神さまを一時移すのが式年遷宮です。上賀茂神社の第42回では社殿の檜皮屋根を葺き替え、仮殿遷座祭で権殿に移した神さまを、2015年(平成27年)の本殿遷座祭(正遷宮)で本殿に戻しました。下鴨神社でも2015年に第34回の式年遷宮が行われました。次の遷宮は2036年(令和18年)で、1036年の第1回から千年の節目にあたります。

上賀茂と下鴨の関係

上賀茂神社の祭神は賀茂別雷大神です。玉依媛命が川で身を清めていたとき、流れてきた丹塗矢(にぬりのや)を持ち帰って床に置くと身ごもり、生まれたのが賀茂別雷大神だと伝わります。玉依媛命の父の賀茂建角身命は、大神の外祖父にあたります。

下鴨神社の起こりには、8世紀中ごろに上賀茂神社から分かれたという説があり、社伝には、崇神天皇7年(紀元前90年)に瑞垣(みずがき)を修造したとあります。両社は平安京を守る神社として朝廷の崇敬を集め、葵祭(賀茂祭)は両社の例祭です。前儀の斎王代の禊は、両社が1年交替で受け持ちます。

立砂と糺の森

上賀茂神社の本殿は、北北西約2km、標高301.5mの神山(こうやま)を拝む形で建っています。二ノ鳥居を入った正面にある一対の円すい形の立砂(たてずな)は神山をかたどったもので、頂に立てた三本と二本の松の葉が陽と陰の一対を表します。境内を出た「ならの小川」は明神川と名を変え、その流れに沿って社家町が続きます。

下鴨神社の糺の森(ただすのもり)は、賀茂川と高野川が合流する三角州に広がる約12万4,000㎡の森で、紀元前3世紀ごろの山代原野の原生林と同じ植生が残っています。境内は1983年(昭和58年)に国の史跡「賀茂御祖神社境内」に指定され、両社は1994年(平成6年)に世界遺産「古都京都の文化財」に登録されました。

白馬奏覧神事と蹴鞠はじめ

上賀茂神社では1月7日、白馬(青馬)を見ると1年の邪気が払われるという故事にならった宮中の白馬節会を神事にした白馬奏覧神事(はくばそうらんじんじ)が行われます。神前に七草粥を供え、神馬「神山号」を神覧に供する祭典で、拝観は自由です。正午から15時まで毎時にも神馬を牽く儀があります。

下鴨神社では1月4日に蹴鞠はじめがあり、京都蹴鞠保存会の鞠人が烏帽子姿で鹿皮の鞠を蹴り上げます。

上賀茂神社の特別参拝と下鴨神社の大炊殿

上賀茂神社は北区上賀茂本山339で、市バス4・46系統「上賀茂神社前」下車すぐ。二ノ鳥居の内は5時30分〜17時に開きます(2026年10月時点)。本殿・権殿は、神職の案内で中門の内に入り権殿の正面に立てる特別参拝(受付10時〜16時、大人500円、家族と一緒の中学生以下は無料)で拝めます。特別公開の期間は料金が変わって子どもも有料になり、葵祭や年末年始の前後は休止します。

下鴨神社は左京区下鴨泉川町59で、京阪出町柳駅から徒歩12分。糺の森を抜けると楼門で、楼門の内は6時30分〜17時に開きます。東西本殿のある御垣(みかき)の内は禁足の場です。重要文化財の大炊殿(おおいどの)などの特別拝観は10時〜16時、大人1,000円・中学生以下無料です。

この項目のミニクイズ

  1. 上賀茂神社の二ノ鳥居を入った正面にある、円すい形の一対の砂の山「立砂(たてずな)」は、何をかたどったもの?

  2. 下鴨神社の東本殿にまつられる玉依媛命(たまよりひめのみこと)は、上賀茂神社の祭神・賀茂別雷大神から見てどんな関係?

  3. 上賀茂神社・下鴨神社の国宝の本殿に見られる「流造(ながれづくり)」の説明として正しいのは?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月18日

更新日:2026年10月18日

  1. 文化庁「国指定文化財等データベース 賀茂別雷神社 本殿」
  2. 文化庁「国指定文化財等データベース 賀茂別雷神社 権殿」
  3. 文化庁「国指定文化財等データベース 賀茂御祖神社 東本殿」
  4. 文化庁「国指定文化財等データベース 賀茂御祖神社 西本殿」
  5. 文化庁「国指定文化財等データベース」(国宝・重要文化財〈建造物〉、京都府、国宝で検索)
  6. 文化庁「国指定文化財等データベース 史跡 賀茂御祖神社境内」
  7. 文化庁「国指定文化財等データベース 世界遺産 古都京都の文化財」
  8. 文化庁「世界遺産 古都京都の文化財 推薦書 内容説明 A 賀茂別雷神社(上賀茂神社)」
  9. 文化庁「世界遺産 古都京都の文化財 推薦書 内容説明 B 賀茂御祖神社(下鴨神社)」
  10. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「上賀茂神社について」
  11. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「国宝 本殿・権殿」
  12. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「御神話」
  13. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「境内案内」
  14. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「国宝本殿 特別参拝」
  15. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「参拝・御祈祷のご案内」
  16. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「上賀茂神社のひととせ」
  17. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「第42回式年遷宮」
  18. 賀茂別雷神社(上賀茂神社)「アクセス」
  19. 賀茂御祖神社(下鴨神社)「御祭神・歴史・神話」
  20. 賀茂御祖神社(下鴨神社)「境内マップ」
  21. 賀茂御祖神社(下鴨神社)「特別拝観について」
  22. 賀茂御祖神社(下鴨神社)「アクセス」
  23. 賀茂御祖神社(下鴨神社)「祭典行事」
  24. 賀茂御祖神社(下鴨神社)「蹴鞠はじめ」
  25. 賀茂御祖神社(下鴨神社)「年末年始のご案内」
  26. 賀茂御祖神社(下鴨神社)「下鴨神社の四季」
  27. 賀茂御祖神社(下鴨神社)社務所「『糺の森』第3期整備計画について」(京都市審議会資料)
  28. 京都市観光協会「京都観光Navi 賀茂別雷神社(上賀茂神社)」
  29. 京都市観光協会「京都観光Navi 賀茂御祖神社(下鴨神社)」
  30. 下鴨神社糺能保存会「第十一回 糺勧進能」(京都観光Navi掲載チラシ)
  31. 北野天満宮「北野天満宮について」
  32. 八坂神社「八坂神社の建造物」
  33. 京都市「上賀茂伝統的建造物群保存地区保存計画」
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