寺社・文化財

鳥獣戯画と高山寺

別の表記・呼び方鳥獣人物戯画

墨の線で描かれた兎と蛙が相撲をとり、猿が応援する絵巻ふうの場面を手前に、奥に山の紅葉に囲まれたこけら葺きの小さなお堂と縁側、谷を流れる川を描いた挿絵。

要点

  1. 4巻のうち1巻は擬人化した動物の遊び、ほかは動物図譜や人の遊び・勝負事が中心

  2. 国宝8件のうち7件は絵画と書跡で、建物は明恵の時代から残る石水院の1棟だけ

  3. 寺で見られるのは複製。原本は博物館の特別展で公開されることがある

  4. 紅葉の季節は石水院の拝観料とは別に入山料が要る

各巻に描かれたもの

鳥獣人物戯画は紙に墨だけで描かれた絵巻で、甲・乙・丙・丁の4巻があります。いちばん知られているのは甲巻(縦30.4センチ、全長1148.4センチ)で、擬人化された兎・猿・鹿・蛙が水遊びをしたり競い合ったりする場面が続きます。乙巻は獅子や青龍など実在と空想の動物を写生ふうに描いた動物図譜で、甲巻とともに平安時代後期の作とみられます。

丙巻は前半が囲碁や賭双六、耳引き・首引きといった人の遊び、後半が擬人化された動物で、丁巻は人だけを描き、勝負事の場面が多い巻です。この2巻は鎌倉時代の作です。

作者の説(鳥羽僧正ほか)

鳥羽僧正覚猷(かくゆう、1053〜1140年)の筆と伝えられていますが、確証はなく、作者は分かっていません。ほかに絵仏師の定智(じょうち)や義清阿闍梨(ぎせいあじゃり)の名を挙げる説もあります。天台宗の僧が即興で描いた戯画「をこ絵」の流れをくむものと推測されています。

高山寺で見られるのは複製

原本は寺で常設公開されていません。石水院に展示されているのは甲巻などの複製です。原本は博物館の展覧会で公開されることがあり、2014年秋の京都国立博物館、2021年の東京国立博物館の特別展で全巻が公開されました。

明恵上人と1206年の再興

高山寺は右京区の北西、清滝川沿いの栂尾にあります。高雄(神護寺)・槇尾(西明寺)・栂尾(高山寺)をあわせて「三尾(さんび)」と呼びます。寺の年表では、宝亀5年(774年)に光仁天皇の勅願で開かれて「神願寺都賀尾坊」と称したのが始まりで、もとは神護寺の別院でした。

建永元年(1206年)、紀州出身の華厳宗の僧・明恵上人(1173〜1232年)が後鳥羽上皇からこの地を賜り、華厳宗の根本道場としました。寺名は、上皇から贈られた勅額「日出先照高山之寺(ひいでてまずてらすこうざんのてら)」の文字からとられました。境内は昭和41年(1966年)に国の史跡に指定され、平成6年(1994年)12月に「古都京都の文化財」の一つとして世界遺産に登録されました。室町時代から紅葉の名所として知られています。

石水院

石水院(五所堂)は高山寺でただ一つの国宝建造物で、鎌倉時代前期の建物です。明治31年(1898年)12月28日に当時の制度で指定を受けています。こけら葺きの住宅ふうの建物です。

もとは「東経蔵(ひがしきょうぞう)」と呼ばれた経蔵でした。建保4年(1216年)に建てられた最初の石水院(明恵の住房)が安貞2年(1228年)の洪水で失われたあと、この建物が石水院の名を継ぎ、明恵の庵室と伝えられてきました。明治22年(1889年)に現在地へ移され、住宅の形に改められましたが、明恵が再興した当時にさかのぼる唯一の遺構です。廂の間には明恵が敬愛した善財童子(ぜんざいどうじ)の小さな像が立ち、南側の縁からは清滝川の谷の緑と紅葉が一望できます。

高山寺の国宝一覧

名称種別国宝指定日
紙本墨画鳥獣人物戯画 4巻絵画(平安〜鎌倉時代)昭和27年(1952年)3月29日
紙本著色明恵上人像(樹上坐禅像) 1幅絵画(鎌倉時代)昭和27年(1952年)11月22日
絹本著色仏眼仏母像 1幅絵画(鎌倉時代)昭和26年(1951年)6月9日
紙本著色華厳宗祖師絵伝(華厳縁起) 7巻絵画(鎌倉時代)昭和27年(1952年)11月22日
玉篇巻第廿七(前半) 1巻書跡(唐時代)昭和27年(1952年)3月29日
冥報記 3巻書跡(唐時代)昭和27年(1952年)11月22日
篆隷万象名義 6冊書跡(平安時代・1114年)昭和27年(1952年)11月22日
高山寺石水院(五所堂) 1棟建造物(鎌倉時代前期)昭和28年(1953年)3月31日

日本最古と伝わる茶園

高山寺には、日本で初めて茶が栽培された場所だという言い伝えがあります。栄西(えいさい)が宋から持ち帰った茶の種を明恵に伝え、明恵はそれを山内で育てて、眠気を覚ます茶を僧たちの修行にすすめました。最古の茶園は清滝川の対岸の深瀬三本木にあり、中世以来、栂尾の茶を「本茶」、ほかの茶を「非茶」と呼んで区別しました。今の茶園はかつての僧房・十無尽院の跡とされる場所にあり、「日本最古之茶園」の碑が立ちます。毎年5月中旬に茶摘みがあり、11月8日には開山堂で明恵上人に新茶を献じる献茶式が営まれ、宇治の茶業組合の役員も参列します。

栂ノ尾へのバスと石水院の拝観料

高山寺は右京区梅ケ畑栂尾町8、JRバスと市バスの「栂ノ尾(とがのお)」停から徒歩約5分です。京都駅からはJRバスの高雄・京北線「栂ノ尾」行または「周山」行で約55分(四条大宮・二条駅前・円町を経由)、地下鉄烏丸線の四条駅からは市バス8系統で約50分です。バス停の近くに市営駐車場(50台)があり、11月のみ有料です。

拝観は8時30分から17時までです(2026年10月時点)。石水院の拝観料は一般1,000円、小学生500円、障がい者・修学旅行生600円です。紅葉の季節は境内の入口で入山料(一般500円、小学生300円)が別に要り、2026年は10月3日から12月上旬までです。11月8日の献茶式は、開山堂の明恵上人坐像(重要文化財)を拝める数少ない機会で、昭和6年(1931年)建立の茶室・遺香庵(いこうあん)の庭(京都市指定名勝)はふだん非公開です。

この項目のミニクイズ

  1. 鳥獣人物戯画の4巻のうち、擬人化された兎・猿・蛙が水遊びや競い合いをする有名な場面があるのは?

  2. 高山寺の国宝建造物・石水院(五所堂)について正しいのは?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月18日

更新日:2026年10月18日

  1. 高山寺「高山寺について」
  2. 高山寺「国宝・重要文化財」
  3. 高山寺「歴史」
  4. 高山寺「鳥獣人物戯画」
  5. 高山寺「日本最古の茶園」
  6. 高山寺「拝観・境内のご案内」
  7. 高山寺「アクセス」
  8. 高山寺「秋期拝観のご案内」
  9. 文化庁「国指定文化財等データベース 紙本墨画鳥獣人物戯画」
  10. 文化庁「国指定文化財等データベース 高山寺石水院(五所堂)」
  11. 文化庁「国指定文化財等データベース 紙本著色明恵上人像」
  12. 文化庁「国指定文化財等データベース 紙本著色華厳宗祖師絵伝」
  13. 文化庁「国指定文化財等データベース 絹本著色仏眼仏母像」
  14. 文化庁「国指定文化財等データベース 玉篇巻第廿七」
  15. 文化庁「国指定文化財等データベース 冥報記」
  16. 文化庁「国指定文化財等データベース 篆隷万象名義」
  17. 文化庁「文化遺産オンライン 紙本墨画鳥獣人物戯画」
  18. 京都市観光協会 京都観光Navi「高山寺<右京区栂尾>」
  19. 京都市都市計画局「高山寺周辺エリア(歴史的資産と守っていきたい眺め)」
  20. 京都国立博物館「特別展覧会 国宝 鳥獣戯画と高山寺」
  21. 観光庁 多言語解説文データベース「鳥獣人物戯画(栂尾山高山寺)」
  22. 東京国立博物館「特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて」
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