二条陣屋(小川家住宅)
別の表記・呼び方二條陣屋

要点
主屋・北土蔵・西土蔵の3棟が重要文化財。1944年に、人が住む民家として全国で2番目に国宝(旧法)になった
武者隠や隠し階段は、身の危険を感じて泊まる公事宿の客を守るための備え
防火は漆喰の外壁、軒先の防火幕、虫籠窓の土戸、屋根へ上る隠し階段(古い図面では屋根に櫓〈やぐら〉)など
今も人が住む家なので、見学は予約したうえでの家の人の案内に限られる
公事宿と大名の宿
小川家住宅は、二条城の南、京都所司代屋敷や京都町奉行所、六角獄舎など幕府の役所が集まっていた地区にある町家です。小川家は寛文8年(1668年)に京都町奉行ができたのを機に上洛し、訴えの書類を作る公事師(くじし)として、裁判を待つ人を泊める公事宿「萬屋(よろずや)」を始めました。のちに薬種商(屋号は木薬屋)も営み、天保年間(1830〜44年)には米・両替商に転じました。
やがて京都所司代を訪れる大名に屋敷を提供するようになり、大名の宿舎にも使われて「陣屋」とも呼ばれました。今の「二條陣屋」という表記の名は、一般公開にあたって小川家が付けたものです。明治から戦前までは「小川旅館」として営業していました。
取り壊しを免れた建物
重要文化財は主屋と北土蔵・西土蔵の3棟で、年代は3棟とも江戸後期です。主屋は居室部・客室部と、両者をつなぐ取合部からなる二階建てで、客室部の一部は三階です。屋敷の中に防火用の泉水や井戸を多く配置していることも、宅地としての特色です。
小川家によれば、屋敷の創建は寛文年間(1661〜73年)にさかのぼります。その後、天明8年(1788年)の大火で全焼し、今の屋敷は嘉永年間(1848〜54年)に再建されました。客室部は大火後の再建の姿をよく残し、大正期などに改造された部分もあります。
戦時中には隣の国民学校の拡張のため取り壊しが計画されましたが、昭和19年(1944年)に旧国宝保存法による国宝に指定されて残り、昭和25年(1950年)の文化財保護法で重要文化財になりました。人が住む民家の国宝指定としては全国で2番目でした。
武者隠と隠し階段
公事宿の客には、裁判のために京へ来て身の危険を感じる人もいたため、屋敷は奇襲に備えた用心深いつくりになっています。
二条陣屋の防犯の仕掛け(模式図)
- 武者隠:大広間の天井裏に隠された見張り部屋。来訪者からは採光の天窓に見える格間(ごうま)の向かい側に見張り窓があり、警護の者が階下を見張りました
- 吊り階段:茶室「皆如庵」の水屋にあり、ふだんは吊り上げて茶壺棚に見せかけ、降ろすと大名を2階へ避難させる階段になります
- 隠し階段:仏間の奥に上り口を隠した階段。2階の降り口の引戸は裏から鍵を掛けられ、追手を足止めします
- 騙戸:襖を開けると壁のような板戸が行く手をふさぎ、脇の小さな網代襖から廊下へ抜けます
- 猿梯子:2階の警護の者が鴨居に足をかけて階下へ降りる口。閉めると下からは降り口と分かりません
- 隠し部屋:押入れの奥の潜り口から入る、窓のない部屋。公事宿で罪人を預かったときに座敷牢の代わりに使いました
大火を教訓にした防火のつくり
天明の大火で財産の大半を失った教訓から、屋敷には念入りな防火のつくりが備わっています。外壁は城と同じように防火性の高い漆喰で塗り込め、木部をできるだけ見せません。庭に面した軒先は風情を損なわないよう塗らずに、垂木の先に釣り針のような金具を付け、近所で火事が起きると濡れたむしろを吊るして防火幕にし、障子などの建具に火の粉が付かないようにしました。
京町家に多い虫籠窓(むしこまど)には左右に動く土戸(防火戸)があり、閉めると火の粉が入りません。三階の奥の襖の向こうには大屋根に上る階段が隠され、屋根伝いの避難路にもなります。古い図面では屋根の上に櫓があって、近所の火事の様子をいち早く知ることができました。すぐそばを流れていた小川の水を吊り上げ、二階の防火用水や生活用水に使った「苫舟(とまぶね)の間」もあります。
お能の間と湯屋
大広間の隣の部屋は、畳を上げると能舞台になる「お能の間」です。床下の中央を深く掘り下げて漆喰で固め、四つの甕(かめ)を据えて音が響くようにしてあります。湯屋(大名湯殿)の浴槽は陶板を張った珍しいもので、解体修理で嘉永年代の陶板と分かりました。国内最古の陶板浴槽です。格子には勝ち虫と呼ばれるトンボが1匹彫られ、訴訟のために泊まる客の勝訴を願った意匠とみられます。湯屋は三方に入口があり、入浴中に襲われても二方向へ逃げられます。
場所と予約制の見学
二条陣屋は中京区大宮通御池下る三坊大宮町137、二条城の南、神泉苑の近くにあります。地下鉄東西線の二条城前駅3番出口から徒歩5分、阪急京都線の大宮駅1番出口とJR嵯峨野線の二条駅からはそれぞれ徒歩15分です。市バスなら「堀川御池」から徒歩5分、15系統の「神泉苑前」から徒歩1分です。
今も家の人が住む民家のため、見学は完全予約制で、家の人のガイドで約1時間かけて回ります。自由見学はできません。予約はおおむね1か月前から予約カレンダーで受け付け、電話では受け付けていません。当分の間は金・土・日曜と祝日の午前10時からの1回だけで、定員は10名です(2026年10月時点)。見学料は大人1,000円、中学・高校生500円、小学生以下は保護者同伴に限り無料です。子ども連れなら、ガイドの内容は小学3年生くらいからが目安です。屋敷内に空調設備はなく、荷物は無料のロッカーに預けます。
この項目のミニクイズ
二条陣屋の庭に面した軒先には、垂木の先に釣り針のような金具が付いています。近所で火事が起きたとき、この金具は何に使った?
二条陣屋の茶室の水屋にある「吊り階段」は、ふだん吊り上げておくことで何に見せかけている?
出典・確認情報
内容確認日:2026年10月22日
更新日:2026年10月22日
