京町家の軒数と京町家条例

要点
重要京町家は指定後の滅失が1.8%にとどまる一方、解体届から保全につながったのは301件中12件
条例の京町家は、おおむね1950年(建築基準法の施行)より前からある伝統的な木造の建物
解体の事前届出は解体を禁じるものではなく、残す方法を探す1年間を市が確保するためのしくみ
杉本家住宅は公開期間の金・土・日に見学できるが、小学生以下は入場できない
条例による「京町家」の定義
「町家(まちや)」は一般的な言葉ですが、京都市の京町家条例は範囲をはっきり決めています。条例第2条の京町家は、建築基準法の施行の際に現に存した(施行の際に建築・修繕・模様替えの工事中だったものを含む)木造の建築物で、伝統的な構造と、都市生活の中から生み出された形態・意匠を持つものです。建築基準法の施行は1950年(昭和25年)なので、おおむね昭和25年以前に建った木造の建物で、平入り(ひらいり)の屋根など伝統的な形を残すものが対象です。
調査ごとの京町家の軒数
京都市は専門家や市民と、戦前に市街化した地域と旧街道沿いの京町家を一軒ずつ確かめる「京町家まちづくり調査」を重ねてきました。平成20・21年度(2008・09年度)の調査では47,735軒、平成28年度(2016年度)の追跡調査では40,146軒でした。差の7,589軒のうち、外観調査で滅失を確かめたのは5,602軒(年平均1.68%)で、残る1,987軒は調査できなかったものなどです。残った京町家のうち空き家は5,834軒です。
令和6年度(2024年度)の調査は住宅地図や解体届のデータを地理情報システム(GIS)で重ねる方法に変わり、残存は34,580軒でした。8年間で5,566軒、年平均1.73%の減少で、毎日約2軒が姿を消している計算です。
京都市内の京町家の軒数の推移
- 平成20・21年度(2008・09年度)
- 平成28年度(2016年度)
- 令和6年度(2024年度)
2017年の京町家条例
「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」は2017年(平成29年)11月16日に公布され、協議・届出・罰則の章は2018年5月1日に施行されました。柱は二つです。一つは指定制度で、市長が特に重要な京町家を「重要京町家」に、京町家が集まる地区を「京町家保全重点取組地区」に指定します。2026年9月30日の第25回までに、重要京町家は1,796軒、重点取組地区は先斗町、祇園新橋、職住共存、千両ヶ辻、伏見南浜、竹田街道など21地区になりました。指定された京町家は、改修や維持修繕の補助、京町家プレートの交付、2026年度からの保全・継承応援金を受けられます。
もう一つが解体の事前届出です。重要京町家と重点取組地区内の京町家は、解体に着手する日の1年前までに市へ届け出なければなりません(その他の京町家は努力義務)。重要京町家については、無届や1年を待たない解体は5万円以下の過料の対象で、解体工事業者には勧告や氏名の公表があります。届出は解体の禁止ではなく、市が早く危機を知り、活用希望者とのマッチングなど残す方法を考える1年間を確保する制度です。
条例の効果と限界
条例の効果は、指定した京町家にははっきり出ています。2018年9月から2024年11月までに重要京町家に指定された1,418軒のうち、指定後に滅失したのは25軒、滅失割合は1.8%です。重点取組地区でも、職住共存地区などでは近くの学区より減少率が低く抑えられています。
一方、解体届が出てから残せる例は限られます。令和7年度末(2026年3月末)までの届出301件のうち、保全・継承につながったのは12件、協議中・未定103件、解体済み186件でした。京都市は全体としては滅失に歯止めがかかっていないとして、2026年4月に推進計画(第2次)を策定し、応援金や改修補助を拡充しました。同年7〜8月には、違反した所有者の氏名公表や、長屋を住戸単位で扱うことを盛り込んだ条例の改正案について意見募集が行われました。
文化財になっている町家
京町家条例とは別に、文化財保護の制度で守られる町家もあります。京都市内の国の重要文化財(建造物)223件のうち「町家」に分類されるのは3件で、国宝の町家はありません(2026年4月時点)。京都市指定有形文化財の町家は10件、市登録は3件です。
代表が下京区の杉本家住宅です。呉服商「奈良屋」の店舗兼住宅で、元治の大火のあと1870年(明治3年)に上棟した市内最大規模の町家として2010年6月に重要文化財に指定され、翌2011年2月には庭が国の名勝になりました。植栽のない屋内の通路兼作業場である「庭」が名勝に指定されたのは、杉本家住宅が初めてです。中京区の小川家住宅(二条陣屋)も重要文化財です。
町家のつくり
京町家のつくりの特徴は、間口が狭く奥に長い「うなぎの寝床」、表から奥まで土間が貫く通り庭、その中ほどに据えたかまど「おくどさん」、職種で異なる格子、虫籠窓(むしこまど)と通り庇です。町並みは、通りを挟んで向かい合う家々が一つの町をつくる両側町(りょうがわちょう)を単位としています。
杉本家住宅と新町通の町家の公開
重要文化財の杉本家住宅(下京区綾小路通新町西入矢田町116)は、阪急烏丸駅・地下鉄四条駅から徒歩約5分です。春や秋の一般公開期間の金・土・日に予約なしで見学できます。2026年秋は11月6日〜22日の金・土・日が公開日で、受付10時〜16時、大人1,500円・高校生以下800円です。小学生以下は入場できないので、子ども連れは注意してください。7月の祇園祭には屏風祭(びょうぶまつり)として公開されます。
中京区新町通六角下る六角町の旧𠮷田家(京都生活工藝館「無名舎」、1909年築、国登録有形文化財)は2025年に京都市へ遺贈され、7月の屏風祭では表の格子を外し、通りから室内の屏風や飾りを無料で眺められます(中には入れません)。下京区新町通綾小路下る船鉾町の長江家住宅(2005年に京都市指定有形文化財)は、北棟が2026年1月に宿泊施設として開業しました(見学できるかどうかは運営者に確認してください)。
この項目のミニクイズ
京都市の2024年度の調査で、市内に残っている京町家はおよそ何軒?
京都市の京町家条例では、ある法律が施行された1950年(昭和25年)の時点ですでにあった木造建築物を「京町家」の条件にしています。その法律は?
京町家条例で、重要京町家の解体をめぐって条例の決まりに違反した解体工事業者に対し、京都市長がとれる措置は?
出典・確認情報
内容確認日:2026年10月18日
更新日:2026年10月18日
- 京都市「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」(平成29年11月16日京都市条例第12号)
- 京都市「京町家を保全・継承するために」(京町家の定義・現状)
- 京都市「京町家の指定制度」
- 京都市「指定されている京町家や地区」
- 京都市「京町家を解体する際の届出」
- 京都市「京町家まちづくり調査に係る追跡調査の結果について」(平成29年5月1日広報資料)
- 京都市「京町家の残存状況等(令和6年度 京町家状況調査)」
- 京都市「京都市京町家保全・継承推進計画(第2次)(素案)概要版」
- 京都市「市長記者会見資料 京町家の保全・継承に向けて〜第2次推進計画を策定、令和8年度から取組強化!〜」(令和8年5月14日)
- 京都市「『京都市京町家の保全及び継承に関する条例』の改正案について(意見募集リーフレット)」
- 京都市「『京都市京町家の保全及び継承に関する条例』改正案に関する市民意見の募集」
- 京都市文化財保護課「京都市内文化財件数(令和8年4月1日現在)」
- 京都市「京都をつなぐ無形文化遺産 京町家とその暮らしの文化」
- 奈良屋記念杉本家保存会「杉本家住宅について」
- 奈良屋記念杉本家保存会「一般公開のお知らせ(2026年10月・11月)」
- 奈良屋記念杉本家保存会「交通アクセス」
- 京都市都市計画局「旧𠮷田家における『屏風祭』の開催」(令和8年7月10日報道発表)
- 京都市「京都市教育委員会告示第10号(京都市指定有形文化財 長江家住宅)」(令和2年3月31日)
- 長江家住宅(共同通信PRワイヤー)「江戸時代の京町家が宿泊施設に!京都市指定文化財『長江家住宅』2026年1月開業」
