寺社・文化財

鞍馬寺と貴船

杉木立の山道で、木の根が網の目のように地表をはう「木の根道」を描いた和紙コラージュ風の挿絵。坂の下には朱塗りの山門が小さく見え、反対側の谷には清流と石段沿いの灯籠が並ぶ。小さく簡略化した親子連れが木の根をまたいで歩いている

要点

  1. 国宝は「木造毘沙門天及吉祥天・善膩師童子立像」と「鞍馬寺経塚遺物」の2件

  2. 愛山費は500円(2023年4月1日から)。霊宝殿の入館料は別に200円

  3. 本殿金堂から奥の院魔王殿まで徒歩約30分、魔王殿から貴船神社まで約20分

  4. 本宮は1055年に移った先で、創建の地は洪水で流された奥宮のほう

鞍馬寺の始まり

寺の縁起『鞍馬蓋寺縁起』によると、宝亀元年(770年)、唐招提寺を開いた鑑真の高弟・鑑禎が夢のお告げと白馬の導きで鞍馬山に登り、毘沙門天に助けられて、毘沙門天をまつる草庵を結んだのが始まりです。延暦15年(796年)には藤原伊勢人(いせんと)が伽藍を整え、のちに千手観音もあわせてまつりました。

平安時代には都の北方を守る寺として信仰を集め、清少納言は『枕草子』で、仁王門から続く九十九折(つづらおり)の参道に触れています。律宗・真言宗・天台宗などの影響を受けてきた信仰を、1947年(昭和22年)に「鞍馬弘教」とまとめ、1949年(昭和24年)に鞍馬寺はその総本山になりました。

仁王門は1911年(明治44年)の再建で、左側の扉は寿永のころ(1182〜84年)のものです。本殿金堂や多宝塔は近年に再建された鉄筋コンクリート造りです。参道の途中にある由岐神社は10月22日の鞍馬の火祭で知られ、拝殿(重要文化財)は慶長12年(1607年)に豊臣秀頼が再建した懸造の建物です。

毘沙門天三尊と経塚遺物

国宝「木造毘沙門天及吉祥天・善膩師童子立像」は、毘沙門天と吉祥天、善膩師童子(ぜんにしどうじ)の3体からなる平安時代の像です。1903年(明治36年)4月15日に指定され、1952年(昭和27年)11月22日に国宝になりました。毘沙門天は右手に鉾を持ち、左手を目の上にかざして京都を望む、北方を守る姿です。三尊は霊宝殿(鞍馬山博物館)3階の仏像奉安室に、聖観音立像などとともにまつられています。

もう1件の国宝「鞍馬寺経塚遺物(きょうづかいぶつ)」は、平安時代から鎌倉時代(1120〜1260年)の経塚から出た一括の遺物で、保安元年(1120年)銘の経筒、石・銅・鉄の宝塔、金銅の三尊像などを含みます。1933年(昭和8年)に指定され、1955年(昭和30年)に国宝になりました。

鞍馬寺が所有する重要文化財

名称(指定名称)種別時代指定
木造観音菩薩立像彫刻鎌倉(1226年)重要文化財(1903年4月15日)
木造毘沙門天立像(鎮守夜叉毘沙門天、所在不動堂)彫刻平安重要文化財(1903年4月15日)
銅燈籠工芸品鎌倉重要文化財(1911年4月17日)
紙本墨書鞍馬寺文書古文書鎌倉〜南北朝重要文化財(1916年5月24日)
黒漆剣(寺伝坂上田村麻呂佩剣)工芸品平安重要文化財(1950年8月29日)
剣(無銘、拵三鈷柄黒漆鞘剣)工芸品平安重要文化財(1950年8月29日)
由岐神社拝殿(重要文化財)は由岐神社の所有です。
国宝・重要文化財・登録有形文化財・市指定の違い

牛若丸の伝説が残る山道

鞍馬に伝わる話では、源義経(幼名・牛若丸)は7歳ごろ鞍馬寺に入り、昼のあいだは由岐神社より上にあった東光坊で仏教を学び、夜になると僧正ガ谷へ出て天狗から兵法を教わりました。16歳ごろに寺を出て、奥州平泉へ下っています。

霊宝殿から奥の院魔王殿へ向かう山道には、牛若丸の伝説にちなむ場所が続きます。牛若丸が水を飲んだ「息つぎの水」、奥州へ向かうとき名残を惜しんで背比べをした「背比べ石」、義経を遮那王尊としてまつる義経堂です。木の根が地表をはう「木の根道」は、岩盤が硬く根が地下へ伸びられないためにできた景色で、牛若丸が修行した場所の一つにも数えられます。

けあげ蹴上

貴船神社と「きふね」の読み

鞍馬山の西、貴船川沿いの貴船神社(左京区鞍馬貴船町180)は、水の供給をつかさどる高龗神(たかおかみのかみ)をまつり、全国に二千社ある水神の総本宮です。朝廷は日照りには黒馬を、長雨には白馬か赤馬を献じて、雨乞いや雨止みを祈りました。貴船山は賀茂川の源流域です。

神社の名は「きふね」と読み、古くは気の生ずる根源として「氣生根」とも書かれました。社名は木船・貴布祢とも書き、明治4年(1871年)から「貴船」になりました。一方、叡山電車の「貴船口」駅の英語表記はKibuneguchiです。

創建の年代は分かっていません。神武天皇の母・玉依姫命が黄船に乗って大阪湾から淀川・鴨川・貴船川をさかのぼり、今の奥宮の地に祠を建てたのが起こりと伝わり、社名の起源をこの「黄船」に求める説もあります。参拝は本宮・結社(ゆいのやしろ)・奥宮をめぐる三社詣で、創建の地の奥宮が洪水で流されたため、天喜3年(1055年)に本宮が今の地へ移されました。結社は、和泉式部が夫との仲を祈って願いがかなったという話が残る縁結びの社です。

鞍馬寺の拝観と貴船への山越え

鞍馬寺は叡山電車の終点・鞍馬駅から徒歩約3分で仁王門です。出町柳駅から叡山電車で約30分、地下鉄の国際会館駅からは京都バス(鞍馬温泉行き)で「鞍馬」まで約25分です。寺に駐車場はありません。

鞍馬と貴船の位置(模式図)

上を北とした図。右下の鞍馬駅から仁王門・由岐神社・本殿金堂・霊宝殿・奥の院魔王殿を経て西の貴船神社本宮へ下る山道と、本宮の北の結社・奥宮、鞍馬川・貴船川と叡山電車の位置を示す。
  • 鞍馬寺:愛山費500円。本殿金堂の開扉は9時〜16時15分(2026年10月時点)
  • 霊宝殿:入館料200円。9時〜16時、火曜(祝日のときは翌日)と12月12日〜2月末日は休館
  • ケーブル(山門駅〜多宝塔駅、約2分):寺が運営し、料金は運賃ではなく堂舎の維持への寄進のお礼。大人片道200円、小学生以下片道100円。上りの終発は16時20分
  • 山越え:鞍馬駅→仁王門(3分)→由岐神社(5分)→九十九折参道→本殿金堂(20分)→魔王殿(30分)→貴船神社(20分)
  • 貴船神社:本宮は参拝無料で、5月1日〜11月30日は6時〜20時。貴船口駅から徒歩約30分(約2km)、または京都バス33系統「貴船」下車徒歩約5分。2026年の紅葉ライトアップは11月7日〜24日(日の入り〜20時30分)

この項目のミニクイズ

  1. 鞍馬山の西にある貴船神社。本宮にまつられる高龗神(たかおかみのかみ)は、何をつかさどる神?

  2. 鞍馬寺の国宝の毘沙門天像は、ほかの2体と合わせた三尊で国宝に指定されています。毘沙門天と一緒の2体はどれ?

  3. 鞍馬山の山門駅と多宝塔駅を結ぶケーブル。鉄道事業法の許可を受けた鉄道として、どんな点が唯一とされる?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月22日

更新日:2026年10月22日

  1. 文化庁「国指定文化財等データベース 木造毘沙門天及〈吉祥天/善膩師童子〉立像〈/(本堂安置)〉」
  2. 文化庁「国指定文化財等データベース 鞍馬寺経塚遺物」
  3. 文化庁「国指定文化財等データベース」(国宝・重要文化財〈美術工芸品〉、所有者「鞍馬寺」で検索)
  4. 文化庁「国指定文化財等データベース 由岐神社拝殿」
  5. 鞍馬寺「歴史」
  6. 鞍馬寺「山内案内」
  7. 鞍馬寺「文化財」
  8. 鞍馬寺「霊宝殿」
  9. 鞍馬寺「入山に際して」
  10. 鞍馬寺「交通地図」
  11. 鞍馬寺「総本山 鞍馬寺」(本殿開扉時間)
  12. 京都市観光協会「京都観光Navi 鞍馬寺」
  13. 京都市観光協会「京都観光Navi 駒札 鞍馬寺」
  14. 京都市観光協会「京都観光Navi 鞍馬山霊宝殿」
  15. 京都市観光協会「京都観光Navi 由岐神社」
  16. 貴船神社「貴船神社について」
  17. 貴船神社「参拝のご案内」
  18. 貴船神社「貴船の杜づくり」
  19. 貴船神社「Kifune Shrine」(英語版トップ・交通案内)
  20. 京都市観光協会「京都観光Navi 貴船神社」
  21. 京都市観光協会「京都観光Navi 駒札 貴船神社」
  22. 京都市観光協会「京都観光Navi 駒札 貴船神社奥宮」
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