寺社・文化財

曜変天目と龍光院

別の表記・呼び方曜変天目茶碗・竜光院

曜変天目と龍光院を表す和紙コラージュ風の挿絵。手前に内側に青い星のような斑文が光る黒い天目茶碗が天目台にのり、奥に閉じた門と長い土塀、松の枝が見える禅寺の塔頭が描かれている

要点

  1. 龍光院の碗は斑文の粒が小さく光も細く短い。内外両面に曜変があるのは藤田美術館の碗だけ

  2. 龍光院は一般の拝観を受け付けておらず、茶碗を見られるのは展覧会にほぼ限られる(2026年は東京国立博物館で11月8日まで展示)

  3. 2019年春は滋賀・東京・奈良の展覧会で、国宝の碗をすべて同じ季節に見られた

  4. 黒田長政が父の菩提のために建てた龍光院に、天王寺屋の名宝の多くが今も伝わる

南宋の建窯で焼かれた曜変天目

天目は抹茶を飲むための茶碗のうち最も格式が高いもので、漏斗(じょうご)のような形と黒い釉薬が特徴です。中国・南宋時代(12〜13世紀)に福建省の建窯で焼かれた黒釉の碗は建盞(けんさん)と呼ばれ、大量に焼かれた建盞のうち、窯の中で偶然に美しい光彩が生じたものが曜変天目です。「曜変」はもとは「窯変(ようへん)」で、輝きを意味する「曜」の字を当てたものとされ、室町時代の日本では茶碗の最高峰に位置づけられました。

完全な形の曜変天目は世界に3碗で、いずれも日本にあって国宝です。東京の静嘉堂文庫美術館の「稲葉天目」、大阪の藤田美術館、京都の龍光院の茶碗で、3点は「曜変中の三絶」とも称されます。

国宝の曜変天目茶碗3点

所蔵所在地大きさ(高さ・口径)伝来国宝指定日
静嘉堂文庫美術館(稲葉天目)東京都千代田区丸の内(静嘉堂@丸の内)6.8cm・12.0cm稲葉家・小野家・岩崎家を経て静嘉堂へ1951年6月9日
藤田美術館大阪市都島区網島町6.8cm・13.6cm徳川家康から水戸徳川家に伝わり、1918年(大正7年)に藤田平太郎の手に1953年11月14日
龍光院(大徳寺の塔頭)京都市北区紫野大徳寺町6.6cm・12.1cm大徳寺の塔頭・大通庵を経て龍光院へ1951年6月9日
3点とも戦前の指定(旧国宝など)を経て国宝に指定されました。

3点の違い

龍光院の茶碗は口縁に建盞特有の「捻り返し」があり、低く小さい高台がつき、漆黒の釉が厚くかかって内側のほぼ全面に曜変が現れます。星のような斑文の粒が小さく、青い光も細く短いため、稲葉天目のような華やかさはないものの、深い趣と格調があります。

稲葉天目は内側の斑文が青や黄色に輝き、江戸時代以降に淀藩主の稲葉家に伝わったことからこの名で呼ばれます。藤田美術館の茶碗は、3点のうちただ一つ、内側と外側の両面に美しい曜変があります。

重要文化財の「曜変天目茶碗」と破片

国の重要文化財に「曜変天目茶碗」の名で指定された茶碗も、滋賀県甲賀市のMIHO MUSEUMにあります。加賀前田家に伝わったもので、内外に油滴(ゆてき)と呼ばれる斑文が浮かび、内側の一部が曜変になっています。また中国でも、浙江省杭州の南宋の宮殿跡付近で曜変天目の破片が見つかっています。

2019年春の国宝3点の同時期公開

龍光院は一般の拝観を受け付けていないため、曜変天目を含む寺宝はほとんど人の目にふれてきませんでした。2019年春、滋賀県甲賀市のMIHO MUSEUMで龍光院の寺宝を一堂に集めた特別展「大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋(はそうあい)」(3月21日〜5月19日)が開かれ、曜変天目も出品されました。

同じ時期に、東京の静嘉堂文庫美術館(4月13日〜6月2日)と奈良国立博物館の藤田美術館展(4月13日〜6月9日)でも国宝の曜変天目が展示され、国宝の3点を同じ春に見られる機会になりました。

黒田長政が創建した龍光院

龍光院は臨済宗大徳寺派の大本山・大徳寺の塔頭(たっちゅう)の一つで、本山の南西側にあります。1606年(慶長11年)、黒田長政が父・孝高(如水)の菩提を弔うため、春屋宗園(しゅんおくそうえん)を開祖とし、江月宗玩(こうげつそうがん)を迎えて創建しました。江月は堺の豪商で茶人の天王寺屋・津田宗及の次男で、天王寺屋に伝わった名宝の多くが今も龍光院に伝わっています。境内には1608年完成とみられる重要文化財の黒田家霊屋(たまや)もあります。

国宝の書院は、寛永年間(1624〜43年)に独立して建てられた四畳半台目(だいめ)の茶室・密庵席(みったんせき)のまわりに、1649年(慶安2年)ごろ広間や広縁を増築したこけら葺の建物で、1961年4月27日に国宝になりました。密庵席は小堀遠州(こぼりえんしゅう)の好みと伝わるやや書院風の茶室です。床の間が二つあり、南宋の禅僧・密庵咸傑(みったんかんけつ)の墨蹟(国宝)と千利休の消息(手紙)を掛けるための床です。江戸時代前期の茶室を代表する建物です。

大徳寺のほかの国宝と工芸品の国宝の件数

大徳寺には龍光院書院のほか、本坊の方丈及び玄関(1635〜36年)と唐門、塔頭・大仙院の本堂(1513年)の国宝建造物があり、北区の国宝建造物5件のうち4件が大徳寺に集まっています。方丈の庭園と大仙院書院の庭園は特別名勝で、絵画では牧谿(もっけい)筆の観音猿鶴図なども国宝です。

京都市の2026年4月1日現在の集計では、市内の国宝217件のうち工芸品は13件(全国254件)で、龍光院の曜変天目はその一つです。

外から眺める大徳寺の伽藍と展覧会での曜変天目

大徳寺(北区紫野大徳寺町)の境内には自由に入ることができ、勅使門・山門・仏殿・法堂が南北に並ぶ伽藍を外から眺められます。

  • 行き方:市バス「大徳寺前」下車。龍光院は本坊の南西側にあります。
  • 本坊(方丈・唐門)は通常非公開です。塔頭の大仙院は通年9時〜16時30分に拝観でき、大人500円・小中学生300円です(2026年10月時点)。
  • 曜変天目の実物:龍光院の茶碗を見る機会は、展覧会にほぼ限られます。2026年は東京国立博物館 平成館の開創700年記念特別展「大徳寺 本朝無双之禅苑」(10月14日〜12月6日)に出品され、展示は前期の11月8日までです。前期の休館日は月曜で、11月2日(月)は開館します。静嘉堂文庫美術館(東京・丸の内)と藤田美術館(大阪市都島区)の茶碗は所蔵館の展覧会で公開されることがあります。

この項目のミニクイズ

  1. 京都の大徳寺龍光院が所蔵する国宝・曜変天目茶碗。曜変(星のような斑文と光彩)が現れているのはどこ?

  2. 曜変天目茶碗が焼かれたのは、中国のどこの窯?

  3. 大徳寺龍光院の国宝・書院にある、小堀遠州の好みと伝わる茶室「密庵席」の広さは?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月18日

更新日:2026年10月27日

  1. 文化庁「国指定文化財等データベース 曜変天目茶碗(竜光院)」
  2. 文化庁「国指定文化財等データベース 曜変天目茶碗(静嘉堂)」
  3. 文化庁「国指定文化財等データベース 曜変天目茶碗(藤田美術館)」
  4. 文化庁「国指定文化財等データベース 曜変天目茶碗(MIHO MUSEUM、重要文化財)」
  5. 文化庁「国指定文化財等データベース 龍光院書院」
  6. 文化庁「国指定文化財等データベース 密庵咸傑墨蹟」
  7. 文化庁「国指定文化財等データベース 龍光院黒田家霊屋」
  8. 文化庁「国指定文化財等データベース」(国宝・重要文化財(建造物)、京都府、国宝で検索)
  9. 静嘉堂文庫美術館「国宝『曜変天目』三碗 同時期公開!」(2019年1月)
  10. 静嘉堂文庫美術館「黒の奇跡・曜変天目の秘密」プレスリリース(2025年)
  11. MIHO MUSEUM「大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋(はそうあい)」
  12. MIHO MUSEUM「大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋 陳列一覧」
  13. 文化庁広報誌ぶんかる「国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき」
  14. 美術手帖「400年間守られてきた寺宝を、初の一挙公開。『大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋(はそうあい)』がMIHO MUSEUMで開催」
  15. nippon.com「京都・大徳寺本坊:国宝の唐門や狩野探幽の天井画を特別公開」(2018年10月4日)
  16. 臨済宗黄檗宗連合各派合議所「大徳寺」(臨黄ネット)
  17. 京都市観光協会「大徳寺」(京都観光Navi)
  18. 京都市観光協会「曝凉展(ばくりょうてん)【大徳寺本坊】」(京都観光Navi)
  19. 文化庁「国指定文化財等データベース 大徳寺方丈庭園」
  20. 文化庁「国指定文化財等データベース 大仙院書院庭園」
  21. 大仙院「拝観案内・アクセス」
  22. 京都市文化財保護課「京都市内文化財件数」(令和8年4月1日現在)
  23. 東京国立博物館ほか「開創700年記念 特別展「大徳寺 本朝無双之禅苑」」
  24. 特別展「大徳寺 本朝無双之禅苑」出品目録(PDF)
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