よみはる
〜はる
別の表記・呼び方はる敬語・ハル敬語・〜はります・〜はった

要点
動作をする人への軽い敬意を表し、「…なさる」にあたる
「書かはる」「起きはった」「寝てはった」のように動詞や「て」に付く
「なさる」が変わった「やはる」から「書きゃはる」「書かはる」と変化したとされる
自分の家族など、自分側の人について話すときにも使う
「〜はる」の意味と例文
「〜はる」は、「見はる」「怒らはる」のように動詞の後ろに付けて、その動作をする人への軽い敬意を表すことばで、「…なさる」にあたります。全国共通語の「〜れる・〜られる」と似た尊敬語として関西地方で広く使われ、現在ではほとんど敬意をともなわずに使うことも多いとされます。
隣の家を訪ねて奥さんがいるかを聞くときも、「いる」に「はる」を付けた形で尋ねます。ほかに、次のような言い方をします。
- 「よーうつってはりますなぁ」(よくお似合いです)
- 「シモへ下がらはったらよろしおすわ」(南に行ったらいいです)
- 「へたばらはった」(お疲れになった)
- 「ケッタイナことを言わはる人やな。」(変なことを言う人だなあ)
付き方と活用の形
「〜はる」は「ら・り・る・る・れ・れ」と活用し、「見(みー)はらへん」(ご覧にならない)、「うつってはります」、「下がらはった」のような形でも使います。前に来る動詞の形によって、付き方が変わります。「見る」「来る」のような1音節の動詞は、のばして「みー」「きー」と言います。
「〜はる」の付き方
| 前に来る形 | 例 |
|---|---|
| 五段(四段)動詞の未然形 | 書かはる、読まはる |
| 五段(四段)動詞の連用形 | 往(い)にはる、飛びはる |
| 五段以外の動詞の連用形 | 起きはった、植えはった |
| 1音節の動詞(のばして言う) | 見(みー)はらへん、来(きー)はるやろ |
| 「て」の後(…ていなさる) | 寝てはった、酔うてはる |
「なさる」から生まれたとされる形
「書かはる」のような形は、補助動詞「なさる」が変化した「やはる」が五段動詞の連用形に付き、「書きやはる」が「書きゃはる」と拗音になり、さらに「書かはる」と直音になってできたものとされます。こうしてできた「はる」を「なさる」と同じように連用形や「て」の後にも付けるようになったのが、「飛びはる」「起きはった」「寝てはった」などの形です。
「なさる」が変化したことばには「なはる」もあります。江戸時代の延享(1744〜48年)ごろから上方の遊里のことばとして見え始め、後期には江戸の遊里でも使われ、一般の町家にも広がりました。関西では「さあ飲みなはれ」「御覧なはれ」のように補助動詞として使います。
「はる」の古い用例としては、1907年の高浜虚子『大内旅宿』に「働かはるので」という一節があります。
全国共通語の敬語との違い
全国共通語の尊敬語は「自分側は立てない」のが基本で、家族のように自分にとってウチの人も自分側に含めます。他人に「父は来週海外へいらっしゃいます」と言うのは適切でないとされます。
これに対して「〜はる」は、自分側の人について話すときにも使われます。自分の父親が家にいることを伝えるときも「いてはります」と言うことがあります。
京都・大阪を中心とする近畿中央部の中でも、京都市の話し手は「〜はる」を特に多く、広い範囲に使うとされます。京都市の話し手のうちでは、女性のほうが「〜はる」をよく使い、使う相手も広いとされます。女性では年代が下がるにつれて尊敬語の色合いが薄れ、話題の人を三人称の人として示す働きが強まっているともいわれます。男性の話し手は、第三者について話すとき、上に扱う人には「はる」、下に扱う人には「よる」「とる」「おる」と使い分けているとされます。
「はる」は、友禅の職人や室町の呉服屋のように特定の個人ではなくひとまとまりに言う人々や、桓武天皇のような歴史上の人物にも付けます。共通語ではこうした相手に尊敬の形を付けませんが、京都市の方言では付けるのが普通とされます。
この項目のミニクイズ
京ことばの「見はる」「怒らはる」の「〜はる」は、どんな働きをすることば?
出典・確認情報
内容確認日:2026年11月8日
更新日:2026年11月8日
- 京都市「きょうとこども情報館 京ことば辞典」
- 京都市観光協会 京都観光Naviぷらす(京ことば「おこしやす」と「おいでやす」の解説)
- JR東海ツアーズ「必修!京都弁講座 京都弁 会話・単語・難解地名集」
- 小学館『精選版 日本国語大辞典』「はる」(助動詞)(コトバンク)
- 小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』「なはる」(コトバンク)
- 文化庁「敬語の指針」(文化審議会答申、2007年)
- 大阪大学「京都語におけるハル敬語の展開に関する社会言語学的研究」(辻加代子、博士論文の内容と審査の要旨、2005年)
- 大阪大学「阪大社会言語学研究ノート」第5号 辻加代子「京都市方言話者のスタイル切換え」(2003年)
