おきばりやす
別の表記・呼び方お気張りやす・オキバリヤス

要点
意味は「がんばってください」
「お+きばり+やす」の形で、「やす」は軽い敬意を含んだ「…なさい」
「きばる」を努力する意味で使った例は1383年の『十問最秘抄』にある
花街では、送り出しに「おはようおかえりやす」ではなくこの言い方を使う
「おきばりやす」の意味と使い方
「おきばりやす」は「頑張って下さい」にあたる京都のあいさつのことばです。もとになっている「きばる」は「がんばる」という意味の京ことばで、「ようキバルなぁ。」(よくがんばるなあ)のように使います。
花街では、芸妓・舞妓がお座敷へ出かけるとき、所属する置屋の女将さんが「おきばりやす」と声をかけて送り出します。精を出してがんばってきて、という励ましです。
「お…やす」で軽い敬意をこめる
「お…やす」は京阪地方の言い方で、間に動詞の連用形をはさんで軽い尊敬の気持ちを表します。助動詞「やす」はこの形になると、軽い敬意を含んだ「…なさい」の意味になります。「きばる」の連用形「きばり」をはさんだ「おきばりやす」は、軽い敬意をこめて「がんばりなさい」と呼びかける形です。
客を迎える「おいでやす」「おこしやす」や、「お帰りやす」(お帰りなさい)も同じ形のあいさつです。「お…やす」の形は古く、1660年の『狂言記』には、帰るよう促す「おかへりやす」の例があります。
- お+きばり+やす → おきばりやす(がんばってください)
- お+いで+やす → おいでやす(いらっしゃいませ)
- お+かえり+やす → おかえりやす(お帰りなさい)
「きばる(気張る)」の意味と古い用例
「きばる」は漢字で「気張る」と書き、共通語の辞書にも載っていることばです。意味には、息をつめて体に力を入れる(いきむ)、気力を奮い起こして努力する、着飾ったりして見えを張る、気前よくお金を出す、などがあります。「おきばりやす」の「きばる」は、努力するという意味にあたります。
努力する意味の例は古く、1383年の『十問最秘抄』(じゅうもんさいひしょう)に「一人きばりて詮なし」(一人で気張ってもかいがない)という一節があります。力を入れていきむ意味では1477年の『史記抄』に、お金をはずむ意味では1649年の俳諧『望一千句』に例が見えます。
江戸時代の上方では、米商人や米相場師が米を売り買いしたり相場を張ったりして商売をすることも「気張る」と言いました。
「おはようおかえり」との違い
家族を見送るときなど、ふだんの暮らしでは「おはようおかえり」(無事に早く帰ってきてください)と声をかけます。花街では、芸妓・舞妓に座敷から早く帰られては商売に差し障るため、送り出すときは「おはようおかえりやす」と言わず、「おきばりやす」か「いっといなはい」(行ってらっしゃい)と言ってきました。
同じ見送りのことばでも、「おはようおかえり」は帰りを待つことば、「おきばりやす」は出かけた先での働きを励ますことばです。
送り出すときの京ことば
| ことば | 意味 | 使う場面 |
|---|---|---|
| おきばりやす | がんばってください | 花街で芸妓・舞妓をお座敷へ送り出すとき |
| いっといなはい | 行ってらっしゃい | 花街で芸妓・舞妓を送り出すとき |
| おはようおかえり | 無事に早く帰ってきてください | 家族を見送るときなど、ふだんの暮らしで |
この項目のミニクイズ
花街の置屋の女将が芸妓・舞妓を送り出すとき、「おはようおかえりやす」ではなく「おきばりやす」と言ってきたのはなぜ?
江戸時代の上方で、米商人や米相場師について「気張る」と言うとき、それはどんなことを指した?
出典・確認情報
内容確認日:2026年11月8日
更新日:2026年11月8日
