よみおいでやす・おこしやす
おいでやす・おこしやす
別の表記・呼び方オイデヤス・オコシヤス・お出でやす・お越しやす

ひとことで言うと
「おいでやす」も「おこしやす」も、客を迎えるときの「いらっしゃいませ」にあたる京ことばです。「おこしやす」は心待ちにしていた客や常連に、「おいでやす」は一見の客にといった使い分けが紹介されることがありますが、辞書類はどちらも同じ「いらっしゃいませ」と説明しており、使い分けは決まりというより目安として語られています。30秒でわかる要点
どちらも「いらっしゃいませ」にあたる迎えのあいさつ
「お+動詞+やす」は京阪で使われる、軽い敬意をこめた言い方
「おこしやす」は常連や待っていた客に、という使い分けは解説記事による説明
「おのぼりやす」「ごめんやす」なども同じ「〜やす」の形
どちらも「いらっしゃいませ」
京都市の「きょうとこども情報館」の京ことば辞典は、「オコシヤス」を「いらっしゃいませ。来てください。」と説明し、「ようこそ、京都にオコシヤス。」という例文を載せています。JR東海ツアーズの「必修!京都弁講座」は、買い物の場面の京都弁として「おいでやす」を挙げ、「いらっしゃいませ」にあたるとしています。
京阪電車の「京都ツウのススメ 第三十回 京ことば」(2010年)も、「おいでやす・おこしやす」を、客を迎えるときに言うことばとしてまとめて紹介しています。まずは、どちらも相手を歓迎するあいさつだと押さえておけば間違いありません。
「〜やす」はどんなことば?
小学館の『精選版 日本国語大辞典』は、「御(お)…やす」を京阪地方で使われる言い方とし、間に動詞の連用形を入れて軽い尊敬の気持ちを表すと説明しています。「お帰りやす」「お出でやす」のように、あいさつのことばとしても使われるとあり、1660年の『狂言記』に「おかへりやす」の例が見えます。
同辞典は、助動詞「やす」が「お…やす」の形になると、軽い敬意を含んだ「…なさい」の意味になると説明しています。「お出で(いで)」に付けば「おいでやす」、「お越し」に付けば「おこしやす」で、どちらも相手に「来てください」「ようこそ」と呼びかける形です。京都市の京ことば辞典に「ごめんください」の意味で載る「ゴメンヤス」も、同じ「やす」を使ったあいさつです。
「やす」そのものは古くからのことばです。『精選版 日本国語大辞典』によると、江戸時代の前期には上方で遊女が多く使い、後期には上方語・江戸語で広く使われました。『デジタル大辞泉』も、「…なさる」の意味は近世前期の上方、「…ます」の意味は近世後期の上方と江戸で使われたとしています。
「〜やす」を使うあいさつの例
| ことば | 意味・使う場面 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| おいでやす | いらっしゃいませ(客を迎える) | JR東海ツアーズ、京阪電車 |
| おこしやす | いらっしゃいませ。来てください | 京都市 京ことば辞典 |
| おかえりやす | お帰りなさい(あいさつ) | 精選版 日本国語大辞典 |
| ごめんやす | ごめんください(人を訪ねたとき) | 京都市 京ことば辞典 |
| おきばりやす | がんばって(花街で送り出すとき) | 京阪電車「京都ツウのススメ」 |
| おのぼりやす・おくだりやす | 千日詣の山道で、登る人・下る人にかける声 | 京都市「京都をつなぐ無形文化遺産」 |
違いについて言われていること
京都市観光協会の「京都観光Naviぷらす」の記事(2023年)は、どちらも基本は「いらっしゃいませ」としたうえで、約束があったり心待ちにしていたりした客には「おこしやす」、一見の客や不意の客には「おいでやす」と使い分けられ、「おこしやす」のほうが歓迎の度合いが強いと紹介しています。
京阪の「京都ツウのススメ」(2010年)は、花街では「おいでやす」は初めての客に、「おこしやす」は常連に対して使うことが多い、と説明しています。二つの記事は、なじみの客や待っていた客には「おこしやす」という方向で一致しています。
確かめられることと、言い切れないこと
一方で、京都市の京ことば辞典やJR東海ツアーズの講座、『精選版 日本国語大辞典』の「御…やす」の項には、二つを使い分けるという説明は見当たりません。使い分けを紹介する京阪の記事も「花街では」「ことが多い」と、場面や程度を限った書き方をしています。
そのため、「おいでやす」と言われたから歓迎されていない、と受け取るのは行き過ぎです。使い分けは、店や家、話す人によって感じ方の違うニュアンスとして語られているものと考え、「京都の人は必ずこう言い分ける」とは言えない、というのが資料から確かめられる範囲です。
今どこで聞ける?
「〜やす」の形は、店先のあいさつだけでなく行事の中にも残っています。京都市の「京都をつなぐ無形文化遺産」は、愛宕神社の千日詣で山道を行き交う人が、登る人には「おのぼりやす」、下る人には「おくだりやす」と、互いの労をねぎらう声をかけ合うと紹介しています。
京阪の記事(2010年・2023年)は、花街で置屋の女将が芸妓・舞妓を送り出すときの「おきばりやす」も紹介しています。迎えるとき、送り出すとき、すれ違うときと、相手を気づかう場面で同じ「やす」が使われているのが分かります。
この項目のミニクイズ
読んだ内容を、2問の四択で確かめてみましょう。
「ようこそ、京都にオコシヤス。」京都市の「きょうとこども情報館」の京ことば辞典によると、「オコシヤス」の意味は?
京都市「京都をつなぐ無形文化遺産」によると、愛宕神社の千日詣で、山を登っている参拝者にかけるあいさつは?
出典・確認情報
内容確認日:2026年10月11日
更新日:2026年10月11日
