京都の梵鐘と除夜の鐘
別の表記・呼び方釣鐘

要点
国宝の2口のうち、妙心寺の鐘は年を記した銘で国内最古、神護寺の鐘は序・銘・書を3人が手がけた「三絶の鐘」
妙心寺の鐘と太宰府・観世音寺の鐘は鐘身の寸法がほぼ同じで、一対の鐘とも呼ばれる
知恩院の大鐘は重さ約70トン。鳴らすのは4月の御忌大会と大晦日だけで、除夜の鐘は17人で撞く
方広寺の鐘は、銘の「国家安康」「君臣豊楽」が大坂の陣のきっかけになった
妙心寺と神護寺の国宝の鐘
妙心寺と神護寺は、どちらも右京区の寺です。京都府内ではほかに、宇治市の平等院の鐘が国宝です。
妙心寺の鐘は内側に「戊戌年四月十三日」で始まる銘があり、戊戌年は文武天皇2年(698年)にあたると推定されています。年を記した銘(紀年銘)をもつ鐘として国内で最も古く、銘には今の福岡県にあった郡の名も見えます。総高151.0cm、口径86.0cmで、すらりとした姿です。福岡県太宰府市の観世音寺の国宝の鐘は、文様を除けば鐘身がほとんど同じ寸法で、同じ鋳物場で相前後してつくられたとみられ、2口は一対の鐘とも呼ばれます。
神護寺の鐘は貞観17年(875年)の銘をもち、高さ147.6cm、口径80.3cmです。銘文の序詞を橘広相(たちばなのひろみ)がつくり、銘を菅原是善(すがわらのこれよし)が選び、藤原敏行(ふじわらのとしゆき)が書いたことから「三絶の鐘」と呼ばれます。
- 京都市内の寺が持つ重要文化財の鐘は9口:東福寺(奈良時代)、報恩寺・勝林院(平安時代)、西本願寺(1150年)、広隆寺の鉄鐘(1217年)、清水寺(1478年)、春光院(耶蘇〈やそ〉紀元1577年の銘)、高台寺(1606年)、方広寺(1614年)
鐘の部分の名前
梵鐘の部分の名前
- 竜頭(りゅうず):いちばん上の吊り手。二つの獣の頭が背中合わせにつながって輪になり、上に宝珠(ほうじゅ)をのせる
- 笠形(かさがた):竜頭の下で、鐘の上ぶたにあたる部分
- 上帯(じょうたい)・中帯(ちゅうたい)・下帯(かたい):鐘を横に一周する帯。上帯と下帯の間を縦に4つに分ける帯は縦帯(じゅうたい)
- 乳の間(ちのま):上帯のすぐ下の長方形の区画(4区)。乳(ち)と呼ぶ突起が並ぶ
- 池の間(いけのま):乳の間の下にある、ほぼ正方形の区画(4区)。銘文はおもにここに表される
- 撞座(つきざ):撞木(しゅもく)で撞く場所。中帯と縦帯が交わる位置に置かれ、蓮華の文様で表されることが多い
- 草の間(くさのま):中帯の下、下帯の上の小さな区画
- 駒の爪(こまのつめ):鐘の下の縁を一周する突き出た帯
知恩院の大鐘と除夜の鐘の108回
東山区の知恩院の釣鐘は寛永13年(1636年)の鋳造で、高さ3.3メートル、直径2.8メートル、重さ約70トンあり、方広寺・東大寺の鐘と並ぶ大鐘として知られます。重要文化財に指定されているのは、延宝6年(1678年)に建てられた鐘楼(大鐘楼)のほうです。大鐘を鳴らすのは4月の御忌大会(ぎょきだいえ)と大晦日の除夜の鐘だけで、除夜の鐘は親綱(おやづな)1人・子綱(こづな)16人の17人で撞きます。
除夜の鐘は、百八の煩悩を除いて清らかな新年を迎えるために撞くとされます。108の数え方には諸説あり、目・耳・鼻・舌・身・意の六つの感覚の好・平・悪、染・浄、過去・現在・未来を掛け合わせて6×3×2×3=108とする説のほか、12か月と二十四節気、七十二候を足して108とする説もあります。
大晦日に一般の人が鐘を撞ける寺もありますが、撞けるかどうかや整理券・事前申込みの有無は寺と年によって変わるので、各寺の案内で確かめてください。
方広寺の「国家安康」の鐘
東山区の方広寺は豊臣秀吉が建てた大仏殿の寺で、今の境内はかつての寺域の北西の隅に縮まっています。慶長19年(1614年)、秀頼による大仏殿の再建とともに梵鐘が完成しましたが、銘文の「国家安康」「君臣豊楽」が家康の名を分けて呪う内容だと徳川方から問題にされ、大仏開眼供養は延期されました。これをきっかけに大坂冬の陣・夏の陣が起こり、豊臣家は滅びました。
鐘には大檀那(だいだんな)の豊臣秀頼と鋳物師の名も刻まれ、昭和43年(1968年)に重要文化財になりました。今も鐘楼に吊るされていて外から見ることができ、銘文もはっきり見えます。梵鐘や茶釜を鋳た鋳物師の座の名は、中京区の釜座通に残っています。
「最古の梵鐘」と「三名鐘」
年を記した銘で比べると最も古いのは妙心寺の鐘ですが、観世音寺の鐘は、銘に年はないものの7世紀末の作とされ、現存する日本最古の梵鐘とする見方もあります。飛鳥時代の末から奈良時代にかけての鐘で銘をもつものは、妙心寺の鐘、福井県の劔(つるぎ)神社の鐘、奈良の興福寺の神亀4年(727年)の鐘の3口です。
「日本三名鐘」は、数え方がいくつかあります。平等院の鐘を園城寺(三井寺)・東大寺の鐘と並べ「音色の園城寺、響きの東大寺、姿の平等院」とする言い方があり、数え方によっては神護寺の鐘も三名鐘に入ります。
妙心寺・神護寺・知恩院・方広寺の鐘の公開
- 妙心寺(右京区花園妙心寺町):鐘は法堂の中にあり、法堂の拝観は9時〜16時、大人500円・小中学生200円(2026年10月時点)。JR嵯峨野線の花園駅から南門まで徒歩5分
- 神護寺(右京区梅ヶ畑高雄町):鐘は常時非公開。拝観は9時〜16時。JRバス・市バスの「高雄」から徒歩約20分
- 知恩院(東山区林下町):大鐘楼は無料で入れる境内にあり、有料なのは友禅苑と方丈庭園。地下鉄東西線の東山駅から徒歩8分、市バス「知恩院前」から徒歩5分
- 方広寺(東山区茶屋町):豊国神社の北隣、京都国立博物館の北。京阪本線の七条駅から歩ける
この項目のミニクイズ
年を記した銘をもつ鐘として国内で最も古い、妙心寺の国宝の梵鐘は、いまどこで拝観できる?
神護寺の国宝の梵鐘が「三絶の鐘」と呼ばれるのはなぜ?
出典・確認情報
内容確認日:2026年10月19日
更新日:2026年10月19日
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(妙心寺)」
- 文化庁「文化遺産オンライン 梵鐘(妙心寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(神護寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(平等院)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(観世音寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(興福寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(方広寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 知恩院大鐘楼」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(東福寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 銅鐘(本願寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 鉄鐘(広隆寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 銅鐘〈耶蘇紀元一千五百七十七年ノ銘アリ〉(春光院)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(清水寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(高台寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(報恩寺)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース 梵鐘(勝林院)」
- 文化庁「国指定文化財等データベース」(国宝・重要文化財(美術工芸品)、所有者住所 京都府、「鐘」で検索)
- 文化庁「文化遺産オンライン 方広寺大仏殿跡及び石塁・石塔」
- 観光庁「地域観光資源の多言語解説文データベース 観世音寺 梵鐘」
- 観光庁「地域観光資源の多言語解説文データベース 梵鐘(平等院)」
- 観光庁「地域観光資源の多言語解説文データベース 方広寺鐘楼」
- 京都市・京都市埋蔵文化財研究所「京都歴史散策マップ10 東山鴨東」
- 京都市埋蔵文化財研究所「第219回京都市考古資料館文化財講座 方広寺」(2010年7月24日)
- 知恩院「大鐘楼【建造物】」
- 知恩院「拝観情報」
- 知恩院「交通アクセス」
- 妙心寺「拝観について」
- 妙心寺「アクセス」
- 京都市観光協会 京都観光Navi「妙心寺」
- 京都市観光協会 京都観光Navi「神護寺」
- 京都市観光協会 京都観光Navi「浄土宗総本山知恩院」
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「除夜の鐘で108回鐘を突くが、108の根拠が知りたい。」(相模原市立相模大野図書館)
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「除夜の鐘の一〇八回とは何を指すのか知りたい。」(南アルプス市立図書館)
