寺社・文化財

仁和寺金堂と紫宸殿

仁和寺の金堂を表す和紙コラージュ風の挿絵。まっすぐな石畳の参道の先に横長で瓦屋根の金堂が建ち、片側に細身の五重塔、もう片側に背の低い薄桃色の桜の林が広がる。手前の大きな門から参道を小さな親子が歩いている

要点

  1. 金堂は内裏の紫宸殿を移して寛永20年(1643年)に上棟。1953年に国宝

  2. 重要文化財は五重塔1基と二王門など13棟で、多くは寛永の再興期の建物

  3. 御室桜は1924年に名勝「御室(サクラ)」、仁和寺御所庭園は2021年に名勝

  4. 慶長の紫宸殿を移した金堂は本瓦葺、安政に造られた今の御所の紫宸殿は檜皮葺の平屋

金堂はもと御所の紫宸殿

金堂(こんどう)は本尊の阿弥陀三尊をまつる御堂で、もとは内裏(御所)の正殿である紫宸殿でした。江戸幕府が慶長16年(1611年)から行った最初の御所造営で建てられ、慶長18年(1613年)に完成した紫宸殿が仁和寺に下され、寛永20年(1643年)に金堂として上棟しました。

移すときには西側の庇(ひさし)を取り除き、檜皮葺(ひわだぶき)の屋根を本瓦葺に改め、内部の建具や間仕切りも少し変えましたが、根本的な変化はありませんでした。虹梁(こうりょう)と蟇股(かえるまた)を組んで屋根裏を見せる内部や、彫刻で飾った向拝(こうはい)に、近世の紫宸殿の特徴がよく残ります。現存する最古の紫宸殿で、紫宸殿を移した遺構としても唯一のものです。

紫宸殿に立てられていた賢聖障子(けんじょうのそうじ)も仁和寺に伝わりました。慶長19年(1614年)に描かれた現存最古の例で、重要文化財として京都国立博物館に保管されています。金堂の屋根には、亀に乗った仙人・黄安(こうあん)の瓦があり、永遠の象徴とされます。

今の京都御所の紫宸殿との違い

今の京都御所の建物は安政2年(1855年)の造営で、紫宸殿は檜皮葺の平屋です。仁和寺の金堂は、それより240年ほど前の慶長の紫宸殿が、瓦屋根の仏堂として姿を変えて残ったものです。

京都御所と里内裏

寛永の再興

仁和寺は応仁元年(1467年)に始まった応仁の乱で、一山のほとんどを焼失しました。寛永11年(1634年)、仁和寺の覚深法親王(かくしんほっしんのう)が上洛中の3代将軍徳川家光に再興を願い出て認められ、家光のもとで復興が始まりました。

ちょうど御所の建て替えと重なり、寛永18年(1641年)には明正(めいしょう)天皇の御所造営に伴って、紫宸殿・清涼殿・常御殿などの主な殿舎が仁和寺に下されました。御影堂は清涼殿の一部を賜って建てたもので、蔀戸(しとみど)の金具なども清涼殿のものを使っています。常御殿は御殿の中心として使われましたが明治20年(1887年)に焼け、今の宸殿は大正3年(1914年)の建物です。

五重塔・二王門・中門・観音堂・経蔵なども、この再興の時期にそろって建てられました。

仁和寺の国宝・重要文化財の建物

国の指定を受けている建物は、国宝の金堂と、「仁和寺」の名でまとめて指定された重要文化財の五重塔(1基)と13棟です。

仁和寺の国宝・重要文化財(建造物)

建物年代指定(指定年)特徴
金堂慶長18年(1613年)国宝(1953年)入母屋造・本瓦葺
五重塔寛永21年(1644年)重要文化財(1900年)総高36.18m
二王門1641〜1645年重要文化財(1931年)境内の正面に建つ二重門。高さ18.7m
中門1641〜1645年重要文化財(1973年)二王門と金堂の間に建つ八脚門
観音堂1641〜1645年重要文化財(1973年)内部は通常非公開
御影堂1641〜1645年重要文化財(1908年)檜皮葺
御影堂中門1641〜1645年重要文化財(1973年)御影堂の前の門
経蔵1641〜1645年重要文化財(1973年)内部に八角の回転式書架(輪蔵)
鐘楼寛永21年(1644年)重要文化財(1973年)袴腰付きで鐘が外から見えない
九所明神本殿(3棟)1641〜1645年重要文化財(1973年)伽藍を守る社。中殿・左殿・右殿
本坊表門慶長頃(1596〜1615年頃)重要文化財(1973年)御所の御台所門を移したと伝わる
遼廓亭(りょうかくてい)江戸中期重要文化財(1937年)御殿の茶室
飛濤亭(ひとうてい)江戸末期重要文化財(1937年)御殿の北庭の茶室
1641〜1645年は寛永18年〜正保元年。1950年より前の指定年は、文化財保護法より前の旧制度で指定された年です。

御室御所と御室桜

仁和寺は、仁和2年(886年)に光孝天皇が建立を発願し、翌年に亡くなった天皇の遺志を継いだ宇多天皇が仁和4年(888年)に完成させた寺です。宇多天皇は寛平9年(897年)に譲位したのち出家し、延喜4年(904年)に境内の南西部に僧房(御室〈おむろ〉)を造営して住みました。以後、仁和寺は「御室御所」と呼ばれ、慶応3年(1867年)まで皇室出身の住職(門跡)が続きました。「御室」は今も御室大内などの地名に使われています。

中門の内側の西側には、遅咲きで背の低い御室桜の林があり、1924年(大正13年)に名勝「御室(サクラ)」に指定されました。中門の北西、観音堂の南の桜苑に約130株、境内全体で約200株あり、品種は御室有明(おむろありあけ)です。仁和寺御所跡は1938年に史跡、御殿の庭は2021年に名勝「仁和寺御所庭園」に指定され、1994年には世界遺産「古都京都の文化財」の構成資産になりました。

二王門から金堂への伽藍の並び

道路に面して建つ二王門をくぐると、参道がまっすぐ北へ延び、中門の先の正面に金堂が建ちます。二王門と中門の間は参道の西に御殿、東に霊宝館、中門の内側は西に御室桜と観音堂、東に五重塔があり、金堂の西に鐘楼と御影堂、東に経蔵と九所明神が並びます。

仁和寺の伽藍配置(模式図)

上を北にした仁和寺境内の図。南の二王門から北へ延びる参道と、中門・金堂など主な建物の位置を描いている。

御室仁和寺駅と境内から見る金堂・五重塔

所在地は右京区御室大内。嵐電(京福電車)北野線の御室仁和寺駅から徒歩約3分、市バス・JRバスの「御室仁和寺」で降りてすぐです(市バスは京都駅から26系統で約40分)。拝観時間は3〜11月が9時〜17時、12〜2月が9時〜16時30分で、受付は30分前までです(2026年10月時点)。車椅子は屋内用・屋外用を借りられます。

境内は御室桜の時期を除いて無料で歩け、金堂・五重塔・二王門を外から見られます。春の御室花まつりの間は、中門から内側の伽藍に入るのに特別入山料(大人800円、高校生以下は無料)が要ります。御所庭園(宸殿・白書院など)は大人800円、期間限定で公開される霊宝館は大人500円で、どちらも高校生以下は無料です。金堂の内部はふだん公開されていませんが、「京の冬の旅」の非公開文化財特別公開で、金堂の裏堂(うらどう)が公開されたことがあります。

この項目のミニクイズ

  1. 仁和寺の金堂は、御所の紫宸殿を移して建て直したときに屋根の葺き方が変わりました。どう変わった?

  2. 仁和寺の重要文化財の建物のうち、慶長年間に造られた御所の清涼殿の一部を賜って建て、蔀戸の金具なども清涼殿のものを使っているのはどれ?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月19日

更新日:2026年10月19日

  1. 文化庁「国指定文化財等データベース」(国宝・重要文化財(建造物)、仁和寺で検索)
  2. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺金堂」
  3. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺 五重塔」
  4. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺 二王門」
  5. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺 御影堂」
  6. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺 本坊表門」
  7. 文化庁「国指定文化財等データベース 絹本著色賢聖障子〈狩野孝信筆〉」
  8. 文化庁「国指定文化財等データベース 御室(サクラ)」
  9. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺御所跡」
  10. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺御所庭園」
  11. 文化庁「世界遺産 古都京都の文化財 推薦書 建造物・庭園目録(仁和寺)」
  12. 仁和寺「仁和寺について」
  13. 仁和寺「境内のご案内」
  14. 仁和寺「境内ルートマップ」(2026年9月)
  15. 仁和寺「御室桜について」
  16. 仁和寺「拝観・交通案内」
  17. 仁和寺「よくあるご質問」
  18. 仁和寺「Ninnaji Temple」(英語版トップ・Open Hours)
  19. 仁和寺「御室桜エリアデッキ改修工事および特別入山料改定のお知らせ」(2025年10月16日)
  20. 京都市観光協会「京都観光Navi 特別入山期間 御室花まつり」
  21. 京都市観光協会「『京の冬の旅』デジタルスタンプラリー(令和6年1月5日〜3月17日開催)スタンプスポット一覧」
  22. 宮内庁「よくあるご質問」(京都御所について)
  23. 宮内庁 京都御所「紫宸殿」
  24. 京都市・京都観光推進協議会「きょうと修学旅行ナビ 仁和寺」
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