寺社・文化財

京都の国宝・重要文化財の茶室――密庵・遼廓亭・飛濤亭など

別の表記・呼び方茶室・茶席・密庵席・国宝茶席三名席・遼廓亭・飛濤亭・傘亭・時雨亭・閑隠席・燕庵

苔むした庭の飛び石の先に建つ茅葺き屋根の小さな茶室と、低く小さな入口、軒先の石の手水鉢と竹の柄杓を描いた和紙コラージュ風の挿絵

要点

  1. 国宝茶席三名席は待庵(大山崎町)・如庵(犬山市)・密庵席(京都市北区の龍光院)

  2. 京都市内の近世以前の国宝・重要文化財で茶室を含むものは20(2026年10月時点、国のデータの構造・解説に茶室と書かれたものなどを数えた)

  3. 茶室でいちばん多い広さは四畳半。それより狭いものを小間、広いものを広間と呼ぶ

  4. 聚光院の閑隠席は2026年秋は12月6日まで特別公開(小中高生500円)

茶室とは?――四畳半、台目、躙口

茶室は茶の湯を行う部屋、またはその部屋を中心にした建物で、茶席・数寄屋(すきや)・囲(かこい)とも呼ばれます。広さは四畳半がいちばん一般的で、それより狭いものを小間(こま)、広いものを広間(ひろま)と呼びます(四畳半を小間に含める説明もあります)。主人が点前(てまえ)をする畳は、ふつうの畳の4分の3ほどの長さの台目畳(だいめだたみ)にすることが多く、「三畳台目」は3畳に台目畳1枚を足した広さです。

茶室には床の間と、客と主人それぞれの出入口があります。草庵風の茶室で客が身をかがめて入る小さな入口が躙口(にじりぐち)で、千利休が二畳の茶室で初めて用いたとされます。

国宝の茶室は3つとされる――京都市内は密庵席だけ

茶室で国宝になっているのは、京都府乙訓郡大山崎町の妙喜庵(みょうきあん)にある待庵(たいあん)、愛知県犬山市の有楽苑にある如庵(じょあん)、大徳寺の塔頭・龍光院(りょうこういん)の書院にある密庵席(みったんせき)の3つとされ、「国宝茶席三名席」とも呼ばれます。待庵は大山崎町にあるので京都市外です。

待庵は天正年間(1573〜92年)ごろ利休好みとして造られた二畳の茶室で、後の時代にたくさんの写しが作られました。如庵は織田有楽斎(うらくさい)が元和4年(1618年)に建仁寺の正伝院に建てた茶室で、明治時代の末に三井家のものとなって東京へ移り、昭和13年(1938年)に神奈川県、昭和47年(1972年)に今の犬山へ移されました。密庵席は小堀遠州(こぼりえんしゅう)の好みと伝わる四畳半台目の茶室です。

京都市内の国宝建造物では、西本願寺の飛雲閣(ひうんかく)の1階にのちに増築された茶室「憶昔(いくじゃく)」があり、黒書院の一の間の裏にも六畳の茶室があります。どちらも建物全体が国宝に指定されたものです。

曜変天目と龍光院西本願寺の国宝建築

京都市内の国宝・重要文化財の茶室一覧

京都市内にある江戸時代までの国宝・重要文化財の建物には、次の20の茶室があります(2026年10月時点)。北区の大徳寺の塔頭には龍光院・眞珠庵(しんじゅあん)・聚光院(じゅこういん)・玉林院(ぎょくりんいん)の4か寺に5つがあり、上京区の小川通寺之内には表千家と裏千家の茶室が並びます。数え方の条件を変えると数は変わります。

京都市内の国宝・重要文化財の茶室の数(時代別)

  • 桃山3か所
  • 江戸前期7か所
  • 江戸中期5か所
  • 江戸後期2か所
  • 江戸末期3か所
2026年10月時点。上の表の20か所を国のデータの時代区分で数えた(角屋は江戸後期、曼殊院の茶室は書院と同じ江戸前期に数えた)。

京都市内の国宝・重要文化財の茶室(近世以前)

茶室(国の指定名称)所有者(区)年代種類公開(2026年10月時点)
茶室(本願寺飛雲閣)本願寺(下京区)桃山(茶室はのちの増築)国宝通常非公開
傘亭(高台寺傘亭〈安閑窟〉及び時雨亭)高台寺(東山区)桃山重要文化財高台寺の境内(拝観は有料)
湘南亭(西芳寺湘南亭)西芳寺(西京区)桃山重要文化財西芳寺の参拝は申込制
密庵席(龍光院書院)龍光院(北区)江戸前期・寛永年間(1624〜43年)国宝—
八窓席(金地院茶室)金地院(左京区)江戸前期・寛永5年(1628年)重要文化財—
六畳の茶室(本願寺黒書院)本願寺(下京区)江戸前期・明暦3年(1657年)国宝—
時雨亭(高台寺傘亭〈安閑窟〉及び時雨亭)高台寺(東山区)江戸前期重要文化財高台寺の境内(拝観は有料)
庭玉軒(眞珠庵通仙院)眞珠庵(北区)江戸前期重要文化財—
伏見稲荷大社御茶屋伏見稲荷大社(伏見区)江戸前期重要文化財—
茶室(曼殊院書院の附〈つけたり〉)曼殊院(左京区)江戸前期(書院は明暦2年〈1656年〉)重要文化財—
遼廓亭(仁和寺)仁和寺(右京区)江戸中期重要文化財—
三畳の茶室(西翁院茶室)西翁院(左京区)江戸中期・貞享年間(1684〜87年)重要文化財—
閑隠席・桝床席(聚光院茶室)聚光院(北区)江戸中期・元文4年(1739年)ごろ重要文化財特別公開中(12月6日まで)
蓑庵(玉林院南明庵及び茶室)玉林院(北区)江戸中期・寛保2年(1742年)重要文化財—
霞床席(玉林院南明庵及び茶室)玉林院(北区)江戸中期・寛保2年(1742年)重要文化財—
二畳台目の茶室(角屋)角屋保存会(下京区)江戸中期〜後期重要文化財角屋の公開期間に開館(12月13日まで)
点雪堂・反古張席(表千家祖堂)不審庵(上京区)江戸後期・寛政元年(1789年)重要文化財—
燕庵藪内燕庵(下京区)江戸末期・天保2年(1831年)ごろ重要文化財—
今日庵・又隠など(裏千家住宅)今日庵(上京区)江戸末期・天保10年(1839年)ごろ(寒雲亭は1788年)重要文化財—
飛濤亭(仁和寺)仁和寺(右京区)江戸末期重要文化財通常非公開(団体は予約で外から見学)
国宝・重要文化財に指定された建造物で、国のデータで所在地が京都市内の近世以前(江戸時代まで)のもののうち、名称(棟名)か構造・解説に「茶室」「席」が記されたものと、名称に「亭」「茶屋」が付くもの、附(つけたり)として茶室が指定されたものを数えた。年代は国のデータの時代区分と年代。「—」は公開の案内を確かめられなかったもの。大徳寺孤篷庵の指定に含まれる「忘筌」は、国のデータの構造欄に茶室の記載がないため入れていない。
京都市内の国宝建造物京都市の文化財の件数

利休・織部・遠州と茶室――「好み」と伝わる茶人

茶室は、それぞれの茶人の考えを映した「好み」で語られます。待庵は利休好み、燕庵(えんなん)は古田織部(おりべ)の好み、密庵席は小堀遠州の好みと伝わります。藪内家の燕庵は織部の作風を伝える茶室ですが、今の建物は摂津の結場村にあった写しを移したものといわれます。

千利休の菩提寺として知られる聚光院の閑隠席(かんいんせき)は、表千家7代の如心斎(じょしんさい)が利休の150回忌に寄進したとされる三畳の茶室です。表千家祖堂は、流祖である利休の像を安置して茶を供えるための建物で、四畳半の点雪堂(てんせつどう)と一畳台目の反古張席を備えます。裏千家住宅でとくに大切な茶室は、四畳半の又隠(ゆういん)と一畳台目の今日庵(こんにちあん)です。仁和寺の飛濤亭(ひとうてい)は光格天皇遺愛の席と伝わり、躙口の代わりに、かがまずに入れる貴人口(きにんぐち)を設けています。

仁和寺金堂と紫宸殿

近代の別邸の茶室も重要文化財

近代の別邸に整えられた茶室にも、重要文化財に指定されたものがあります。左京区下鴨の旧三井家下鴨別邸の茶室、京都大学が持つ清風荘(せいふうそう)の茶室(大正3年)、南禅寺の近くの清流亭の立礼席(大正2年ごろ)、野村碧雲荘の花泛亭(昭和2年)などです。旧三井家下鴨別邸の茶室は、三井家が土地を買う前に建っていた幕末以前の邸宅の一部を改めたもので、通常は非公開です。

今どこで見られる?

公開の状況は茶室ごとに違います。2026年10月時点で確かめられたものは次のとおりです。

  • 聚光院(北区紫野大徳寺町):2026年秋の特別公開(9月18日〜12月6日、9時30分〜15時30分受付)で閑隠席などを公開。大人1,000円・小中高生500円で、未就学児は拝観できない。休止日あり。市バス「大徳寺前」から徒歩約5分
  • 高台寺(東山区):傘亭・時雨亭は境内に建つ。拝観は大人800円・中高生400円、小学生以下は大人の保護者同伴で無料(小学生5人につき大人1人以上)
  • 仁和寺(右京区):飛濤亭は御殿の北庭の築山に建ち、ふだんは一般公開していない。事前予約の団体は庭を歩いて外から見学できる
  • 西本願寺(下京区):飛雲閣は通常非公開
  • 角屋(下京区):角屋もてなしの文化美術館として公開期間に開館。2026年秋は9月18日〜12月13日の金〜日曜・祝日
  • 国宝茶席三名席のうち、犬山市の如庵は月に1度、事前予約制の内部見学会がある
しまばら・すみや島原と角屋

この項目のミニクイズ

  1. 仁和寺の茶室・飛濤亭の客の入口は、身をかがめて入る躙口ではなく、立ったまま入れる高さです。この入口を何という?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月28日

更新日:2026年10月28日

  1. JAANUS(日本美術・建築用語データベース)「chashitsu 茶室」
  2. JAANUS(日本美術・建築用語データベース)「koma 小間」
  3. JAANUS(日本美術・建築用語データベース)「nijiriguchi 躙口」
  4. 愛知県「Aichi Now 日本庭園 有楽苑(国宝茶室「如庵」)」
  5. 文化庁「国指定文化財等データベース 妙喜庵書院及び茶室(待庵)」
  6. 文化庁「国指定文化財等データベース 如庵」
  7. 文化庁「国指定文化財等データベース 龍光院書院」
  8. 文化庁「国指定文化財等データベース 本願寺飛雲閣」
  9. 文化庁「国指定文化財等データベース 本願寺黒書院及び伝廊(黒書院)」
  10. 文化庁「国指定文化財等データベース 高台寺傘亭(安閑窟)及び時雨亭(傘亭)」
  11. 文化庁「国指定文化財等データベース 高台寺傘亭(安閑窟)及び時雨亭(時雨亭)」
  12. 文化庁「国指定文化財等データベース 西芳寺湘南亭」
  13. 文化庁「国指定文化財等データベース 金地院茶室」
  14. 文化庁「国指定文化財等データベース 眞珠庵通仙院」
  15. 文化庁「国指定文化財等データベース 伏見稲荷大社御茶屋」
  16. 文化庁「国指定文化財等データベース 曼殊院(書院)」
  17. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺(遼廓亭)」
  18. 文化庁「国指定文化財等データベース 仁和寺(飛濤亭)」
  19. 文化庁「国指定文化財等データベース 西翁院茶室」
  20. 文化庁「国指定文化財等データベース 聚光院茶室」
  21. 文化庁「国指定文化財等データベース 玉林院南明庵及び茶室(蓑庵)」
  22. 文化庁「国指定文化財等データベース 玉林院南明庵及び茶室(霞床席)」
  23. 文化庁「国指定文化財等データベース 角屋」
  24. 文化庁「国指定文化財等データベース 表千家祖堂」
  25. 文化庁「国指定文化財等データベース 燕庵」
  26. 文化庁「国指定文化財等データベース 裏千家住宅」
  27. 文化庁「国指定文化財等データベース 孤篷庵本堂(方丈)、書院及び忘筌(忘筌)」
  28. 文化庁「国指定文化財等データベース 旧三井家下鴨別邸(茶室)」
  29. 文化庁「国指定文化財等データベース 清風荘(茶室)」
  30. 文化庁「国指定文化財等データベース 清流亭(立礼席)」
  31. 文化庁「国指定文化財等データベース 野村碧雲荘(花泛亭)」
  32. 文化庁「国指定文化財等データベース」(検索)
  33. 本願寺「飛雲閣」
  34. 仁和寺「境内のご案内」
  35. 観光庁「地域観光資源の多言語解説文データベース 飛濤亭」
  36. 高台寺「歴史」
  37. 高台寺「拝観」
  38. 京都市観光協会「京都観光Navi 大徳寺 聚光院 開創460年 特別公開」
  39. 西芳寺「よくあるご質問」
  40. 角屋保存会「角屋もてなしの文化美術館」
  41. 京都市観光協会「京都観光Navi 旧三井家下鴨別邸について」
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