年中行事

よみはっさく

八朔

別の表記・呼び方八月朔日・八朔の挨拶・花街の八朔・祇園の八朔

夏の午前、石畳の花街の通りを、正装の舞妓が日傘をさして挨拶回りに向かう後ろ姿のイラスト

ひとことで言うと

八朔(はっさく)は「八月朔日(ついたち)」、つまり8月1日のことです。京都の花街では、この日に芸妓や舞妓が芸事の師匠やお茶屋を訪ね、日頃の感謝の気持ちを伝える行事として受け継がれています。京都市の資料は、農家の初穂を恩人に贈る風習が広まったものとしています。

30秒でわかる要点

  1. 「八月朔日」の略で、8月1日のこと

  2. 花街の芸妓・舞妓が師匠やお茶屋に感謝を伝える

  3. 初穂を恩人に贈る農家の風習に始まるとされる

  4. 舞妓は正装用の髪型「奴島田」を結う日の一つ

八朔は「8月1日」のこと

八朔は「八月朔日(ついたち)」を縮めた言葉で、8月1日を指します。京都市の「京都をつなぐ無形文化遺産」の「京・花街の文化」は、八朔(8月1日)を、芸妓や舞妓が師匠やお茶屋に日頃の感謝の気持ちを伝える行事として紹介しています。

同じ資料は、八朔を祇園甲部・宮川町・先斗町・上七軒・祇園東の「五花街に伝わる伝統行事」の一つに挙げています。一つの花街だけのしきたりではなく、京都の花街に共通する夏の行事という位置づけです。

由来は「初穂」を贈る風習

京都市の同じ資料によると、八朔はもともと、農家で古くからあった、初穂を恩人などに贈る風習でした。それが武家や公家にも広まり、日頃お世話になっている人に贈り物をする日になったとされています。

花街の八朔は、この「お世話になった人に礼を尽くす日」という意味を今に伝えるものといえます。芸妓や舞妓にとって、芸事を教える師匠や、座敷でのもてなしの場となるお茶屋は、日々の仕事と稽古を支えてくれる大切な相手です。

京都市の「伝統伎芸とおもてなしの担い手『芸妓』『舞妓』」によると、舞妓になるには置屋に住み込み、手伝いをしながら舞や踊り、作法、京ことばなどを身につけ、見習いを経て「店出し」します。舞妓になってからも稽古を重ね、「衿替え」して芸妓になります。こうした長い修業を支える人たちへの礼が、八朔の挨拶に込められています。

正装の髪型「奴島田」

「京・花街の文化」の「花街を支える『ひと』『わざ』『もの』」によると、舞妓の髪は地毛で結い、舞妓になって間もない頃の「割れしのぶ」、3年目くらいからの「おふく」、衿替え(芸妓になること)の前の「先笄(さっこう)」と、年数に応じて髪型が変わります。

これとは別に特別な髪型もあり、同じ資料は「奴島田(やっこしまだ)」を正月や八朔などの正装用、「勝山」を祇園祭の時の髪型として挙げています。八朔は、正月と並んで正装で臨む日だということが、髪型からも分かります。

花街の「挨拶の暦」の中の八朔

花街には、八朔のほかにも節目ごとに挨拶をする行事があります。京都市の資料は、新年の「始業式」、12月13日の「事始め」、大晦日の「おことうさん」などを紹介しています。下の表の中では、八朔だけが夏に行われる挨拶の行事です。

八朔と事始めはどちらも感謝を伝える日ですが、中身は少し違います。事始めは正月の準備を始める日で、お世話になった方々に鏡餅を納め、一年の御礼と新年に向けた挨拶をすると説明されています。八朔は、日頃の感謝そのものを伝える夏の挨拶です。

京都市の資料にみる、花街の主な挨拶の行事

時期行事内容
1月7日(上七軒は1月9日)始業式正装の黒紋付に稲穂のかんざしで関係者と挨拶を交わし、その年の精進を誓う
8月1日八朔芸妓や舞妓が師匠やお茶屋に日頃の感謝を伝える
12月13日事始めお世話になった方々に鏡餅を納め、一年の御礼と新年に向けた挨拶をする
大晦日おことうさん祇園甲部・宮川町・祇園東で、芸妓と舞妓がお茶屋に年末の挨拶に回る
京都市 京都をつなぐ無形文化遺産「花街に伝わる伝統行事」をもとに作成。

「八朔祭」とは別の行事

名前に「八朔」が付く行事は、花街の挨拶だけではありません。京都観光Naviによると、松尾大社の「八朔祭」は毎年9月の第一日曜日に行われる祭りで、農作物が台風や病害虫の被害を受けやすい時期に、風雨安穏・五穀豊穣・家内安全を祈ります。2026年は9月5日・6日に行われ、奉納相撲や盆踊りなどがありました。

このように、花街の八朔が8月1日の感謝の挨拶であるのに対し、松尾大社の八朔祭は秋の実りを祈る神社の祭りです。同じ「八朔」でも、日付も中身も異なるので区別して覚えておくと混乱しません。

どこで見られる?

八朔の挨拶回りは、五花街のまちなかで行われます。京都市の「五花街の紹介」によると、祇園甲部は四条通を挟んで北は新橋通、南は建仁寺通、西は大和大路通、東は東大路通に囲まれた一帯で、宮川町は鴨川の東、四条通の南から五条通まで、上七軒は北野天満宮の東に広がる花街です。

八朔は公演のように見せるための催しではなく、師匠やお茶屋への挨拶です。同じ資料が、花街の文化はお茶屋や置屋、客など多くの人に支えられていると説明しているように、まちを歩くときは挨拶の行き来を妨げない心づかいが大切です。

この項目のミニクイズ

読んだ内容を、2問の四択で確かめてみましょう。

  1. 京都市「京都をつなぐ無形文化遺産」によると、芸妓や舞妓が師匠やお茶屋に日頃の感謝を伝える花街の行事「八朔」は何月何日?

  2. 京都市「花街を支える『ひと』『わざ』『もの』」によると、舞妓が正月や八朔などの正装用に結う特別な髪型は?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月11日

更新日:2026年10月11日

  1. 京都市 京都をつなぐ無形文化遺産「花街に伝わる伝統行事」
  2. 京都市 京都をつなぐ無形文化遺産「花街を支える『ひと』『わざ』『もの』」
  3. 京都市 京都をつなぐ無形文化遺産「五花街の紹介」
  4. 京都市 京都をつなぐ無形文化遺産「伝統伎芸とおもてなしの担い手『芸妓』『舞妓』」
  5. 京都市 京都をつなぐ無形文化遺産「花街のおもてなし」
  6. 京都市観光協会 京都観光Navi「八朔祭・八朔祭諸行事【松尾大社】」
辞典トップへ戻る