食と道具

八ツ橋

別の表記・呼び方八つ橋・八ッ橋・生八ツ橋・生八つ橋

白い皿にのった、瓦のように反った焼き八ツ橋の束と、三角に折ってあんを包んだ生八ツ橋。奥の畳に琴が置かれ、背景にはかきつばたの咲く池に折れ曲がって架かる板橋

要点

  1. 材料は米粉・砂糖・ニッキ。焼いて反りをつけた短冊形

  2. 焼かずに食べる生八ツ橋は戦後に広まったとされる

  3. 八橋検校の墓は、黒谷の金戒光明寺の中にある常光院にある

  4. 2013年に京都市が集めた市民意見で、おすすめの和菓子の2位

焼いた八ツ橋と生八ツ橋

八ツ橋は堅焼き煎餅の一種です。米粉に砂糖とニッキ(シナモン)を加えた生地を蒸してから薄くのばし、短冊形に切って鉄板で焼きます。焼くときに丸い棒に当てて琴に見立てた反りをつけるので、弓なりに曲がった形になります。水分が少ないため干菓子(ひがし)に分けられます。

生八ツ橋は、八ツ橋の生地を焼かずに切った柔らかい菓子です。戦後に広まったとされ、1960年代に生まれたとする説明もあります。生八ツ橋であんを包んだものをはじめ、さまざまな味のものが作られ、つぶあん入りの生八ツ橋を昭和22年(1947年)から売っているとする店もあります。2013年に京都市が募った「おすすめのおばんざいや和菓子」の市民意見では、和菓子の1位が水無月、2位が八つ橋、3位がはなびら餅でした。

焼いた八ツ橋と生八ツ橋

くらべる点焼いた八ツ橋(堅焼き)生八ツ橋
生地米粉・砂糖・ニッキを蒸して練る同じ生地を焼かずに使う
形短冊形に切って焼き、反りをつける薄くのばして切る。あんを包むものもある
分類干菓子生菓子
始まり江戸時代と伝わる(年は店によって違う)戦後(1960年代とする説明もある)
水無月

名前の由来――八橋検校と三河の八橋

「八ツ橋」の名の由来には二つの説があり、どちらとも決まっていません。

  • 箏曲(そうきょく)の祖として知られる八橋検校(やつはしけんぎょう)をしのび、琴の形に似せて仕上げた堅焼き煎餅を「八ッ橋」と名付けたという説
  • 『伊勢物語』の東下りの段に出てくる三河国の八橋(今の愛知県知立市)の板橋に、形が似ているからという説

八橋検校と黒谷

八橋検校は慶長19年(1614年)に生まれたとされる箏曲家で、「六段の調」などを作り、京都で多くの弟子を育てて、貞享2年(1685年)に亡くなりました。墓は左京区の金戒光明寺(くろ谷さん)の中にある常光院にあります。検校はふだんから倹約を心がけ、流れてしまう米を集めて粉にひき、堅焼きの煎餅を作ったという話が伝わります。

命日の6月12日には、八ツ橋の店がそれぞれ検校の法要を営んでいます。

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聖護院に本店があるわけ

八ツ橋の老舗のうち2軒は、左京区聖護院の京都熊野神社のそばに本店を構えています。このあたりは黒谷の金戒光明寺へ向かう参道にあたり、聖護院に本店を置く店の言い伝えも、この地の茶店から始まります。

ある店は、検校が亡くなって4年後の元禄2年(1689年)、墓参りの人が絶えない黒谷の参道にあたる聖護院の森の茶店で、琴をかたどった干菓子を「八ッ橋」の名で売り始めたと伝えます。別の店は、聖護院の森の熊野神社門前に開いた茶店で米粉の白餅を旅人に出していたところから始まり、元禄2年に橋の形の煎餅が生まれたと伝え、製法は三河国の八橋村の寺の僧から授かったとしています。祇園の茶店で検校に教わった堅焼き煎餅が始まりだとし、文化2年(1805年)の創業を名乗る店もあります。

八ツ橋が全国に知られるようになったのは、明治時代に京都駅で売られ始めてからです。今は聖護院の本店のほか、京都駅や百貨店、清水・祇園などの観光地の店でも扱われています。

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創業年をめぐる裁判

八ツ橋の店どうしでは、創業年や起源の説明が裁判で争われたことがあります。2018年、井筒八ッ橋本舗が、聖護院八ッ橋総本店ののれんや包装にある「創業元禄二年」などの表示は不正競争防止法の品質等誤認表示にあたるとして、表示の差し止めと損害賠償を求めて京都地裁に訴えました。

京都地裁は2020年6月10日に請求を退け、大阪高裁も2021年3月11日に控訴を棄却しました。判決は、300年以上前の創業年や起源は公的な資料で確かめられない言い伝えの類で、買う人もそう受け止めるため、品質を誤認させる表示にはあたらないと判断しています。どの店の起源の説明が正しいかを決めた判決ではありません。

この項目のミニクイズ

  1. 八ツ橋の名の由来の一つとされる『伊勢物語』の「八橋」。この八橋があったのは、今のどこ?

出典・確認情報

内容確認日:2026年11月8日

更新日:2026年11月8日

  1. 農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 米菓子・豆菓子(京都府)」
  2. 京都市文化市民局文化財保護課「京の菓子文化 菓子のある風景」
  3. 京都市文化財保護課「『京の食文化』には何があるの?」
  4. コトバンク「八つ橋」(小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』・『デジタル大辞泉』ほか)
  5. コトバンク「八橋」(『精選版 日本国語大辞典』・小学館『デジタル大辞泉』)
  6. 聖護院八ッ橋総本店「聖護院八ッ橋について」
  7. 聖護院八ッ橋総本店「八橋検校と八橋忌」
  8. 聖護院八ッ橋総本店「店舗紹介」
  9. 本家西尾八ッ橋「会社概要」
  10. 本家西尾八ッ橋「本店」
  11. 本家西尾八ッ橋「歴史」
  12. 井筒八ッ橋本舗「井筒八ッ橋の歴史」
  13. 慶應義塾大学法学研究会「法学研究」94巻11号 判例研究(大阪高判令和3年3月11日 八ッ橋の創業年表示事件)
  14. 北海道大学「知的財産法政策学研究」62号 田村善之・張唯瑜「京銘菓八ッ橋の創業年や来歴に関する表示について不正競争防止法上の品質誤認表示該当性を否定した判決―八ッ橋事件―」
  15. 東洋経済オンライン「『八ッ橋』訴訟、なぜ業界各社は沈黙するのか 井筒vs.聖護院」(2018年7月7日)
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