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伝統的建造物群保存地区と岡崎の文化的景観

京都の4つの伝統的建造物群保存地区と岡崎を表す和紙コラージュ風の挿絵。石段の坂に並ぶ町家、白川沿いの格子のお茶屋、茅葺きの農家、土塀と小川に架かる土橋、奥に疏水と大きな朱の鳥居が配され、小さな親子が歩いている

要点

  1. 4地区は門前町が2つ、茶屋町と社家町が1つずつで、社家町の重伝建は全国で上賀茂だけ

  2. 産寧坂と祇園新橋は、国の制度より前に市の条例で守られ始めていた

  3. どの地区も人が住む町。家の中をのぞかず、社家やお茶屋の門・玄関には入らない

  4. 岡崎が選ばれたのは、疏水を軸に寺院・農地・文教施設が重なってきた風景のため

「重伝建」のしくみ

伝統的建造物群保存地区(伝建地区)の制度は、1975年(昭和50年)の文化財保護法改正でできました。城下町や門前町のように建物がまとまって残る町並みを守るしくみで、まず市町村が都市計画などで地区を決めて保存計画を定め、その申出を受けて国が価値の高いものを「重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)」に選びます。国宝などの「指定」と違って「選定」と呼ぶのはこのためです。全国の重伝建は130地区です(2026年9月時点)。

京都市は国より早く、1972年に全国初の総合的な町並み保全策となる市街地景観条例を定め、同じ年に産寧坂地区を、1974年に祇園新橋地区を、市独自の「特別保全修景地区」に指定していました。国の制度ができると1976年に両地区を伝建地区にし、同じ年に重伝建に選ばれました。地区内の新築や外観の変更には市の許可が必要で、修理や町並みに合わせて直す「修景」には補助があります。

4地区の違い

京都市内の重伝建4地区と京都岡崎の文化的景観の位置(模式図)

上を北にした京都市の模式地図。中央を鴨川が南北に流れ、北で賀茂川と高野川に分かれる。賀茂川の東の最北に上賀茂、鴨川の東、四条通の少し北に祇園新橋、その南東の東山山麓に産寧坂、祇園新橋の北東の東山山麓に岡崎の文化的景観が面で示され、画面の左上(北西)の端に嵯峨鳥居本がある。京都駅は南の中央。

京都市内の重要伝統的建造物群保存地区4地区

名称所在区種別国の選定面積
京都市産寧坂東山区門前町1976年9月4日約8.2ha
京都市祇園新橋東山区茶屋町1976年9月4日約1.4ha
京都市嵯峨鳥居本右京区門前町1979年5月21日約2.6ha
京都市上賀茂北区社家町1988年12月16日約2.7ha
  • 産寧坂(東山区下河原町・桝屋町あたり):清水寺・法観寺・祇園社の門前町として始まり、江戸中期以降に参詣の道に沿って町ができました。石段の産寧坂(三年坂)と二年坂、八坂の塔のまわり、高台寺表門から円山公園への道、石塀小路が範囲で、江戸末期から大正の町家が中心です。約65%が伝統的建造物です。選定時は約5.3haで、1995年に石塀小路の一帯を加えて約8.2haになりました。
  • 祇園新橋(東山区元吉町あたり):1712年(正徳2年)に祇園内六町の茶屋街として開かれ、芝居や芸能と結びついて栄えました。白川の流れと石畳を背景に、新橋通に本2階建のお茶屋様式の町家が連なり、約75戸のうち約70%が伝統的建造物です。
  • 嵯峨鳥居本(右京区嵯峨鳥居本):室町末期に農林業などの集落として開かれ、江戸中期から愛宕(あたご)神社への参詣道・愛宕街道の門前町の性格が加わりました。街道沿い約600mが範囲で、化野(あだしの)念仏寺を境に、一の鳥居に近い上地区は茅葺きの農家風、下地区はむしこ造りの町家風の建物が中心です。約50%が伝統的建造物です。
  • 上賀茂(北区上賀茂藤ノ木町あたり):上賀茂神社の境内を出た「ならの小川」が名を変えた明神川に沿って、室町時代から神官(社司と氏人)の屋敷町ができました。土橋、土塀、門、妻入りの社家の主屋がそろい、重伝建で種別が社家町なのは全国でこの地区だけです。52戸のうち約63%が伝統的建造物です。

風景を守る岡崎の「文化的景観」

文化的景観は、人々の生活や生業と風土がつくった景観地を守る文化財で、建物の群ではなく風景そのものが対象です。自治体の申出に基づいて国が「重要文化的景観」に選定し、京都市では東山山麓から鴨川にかけての岡崎一帯が2015年10月7日に選ばれました。文化庁の重要文化的景観の一覧に載る全国74件のうち、市内はこの1件です。

岡崎は平安時代後期に白河殿や六勝寺(りくしょうじ)の大寺院群が造られ、応仁の乱のあとは近郊農村になりました。1890年(明治23年)に琵琶湖疏水が開かれると、疏水の水を使う工場地帯と、南禅寺の旧境内地に七代目小川治兵衛(植治)らが作庭した別邸群が生まれ、1895年の第四回内国勧業博覧会と平安遷都千百年紀念祭で平安神宮が創建されました。その後も動物園(1903年)、府立図書館(1909年)、市美術館(1933年)が建ち、疏水を軸に寺院・農地・文教施設が重なってきたことが選定の理由です。

琵琶湖疏水と蹴上発電所

京都市独自の景観制度

国の重伝建のほかに、京都市は1995年制定の市街地景観整備条例で独自の地区を指定しています。町並みの外観を守る「歴史的景観保全修景地区」は祇園町南、祇園縄手・新門前、上京小川の3地区、地域色のある賑わいを整える「界わい景観整備地区」は伏見南浜、三条通、上賀茂郷、上京北野、千両ヶ辻、西京樫原、本願寺・東寺、先斗町の8地区です。

家族で歩くときのアクセスと注意

どの地区も人が住む町です。家の中をのぞかない、玄関前で撮影しないなど、暮らしの場であることを子どもにも伝えて歩いてください。石段や石畳が多く、抱っこひもが楽な場面があります。

  • 産寧坂:市バス「東山安井」「五条坂」から徒歩約5分。清水寺は朝6時に開門するので、人が増える前の朝が歩きやすい
  • 祇園新橋:京阪「祇園四条」駅から徒歩約3分。白川沿いの石畳は平ら。お茶屋の玄関前に立ち入らない
  • 嵯峨鳥居本:京都バス「鳥居本」から徒歩約3分、JR嵯峨嵐山駅から徒歩約30分。京都市嵯峨鳥居本町並み保存館は入館無料で、明治初期の町家と昭和初期の愛宕街道の模型が見られる。化野念仏寺は大人500円、小学生以下は保護者同伴で無料
  • 上賀茂:市バス「上賀茂神社前」から徒歩約2分(京都駅から4系統)。明神川沿いは平らで歩きやすい。社家は住まいなので門の中に入らない
  • 岡崎:地下鉄東西線「東山」駅から京都市京セラ美術館まで徒歩約8分、市バスは「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車。岡崎公園と疏水沿いは無料で歩ける

この項目のミニクイズ

  1. 重伝建の産寧坂地区が1995年に広げられたとき、新たに加えられた一帯は?

  2. 国の重要文化的景観「京都岡崎の文化的景観」に選ばれている岡崎。平安時代後期にこの地に造られた大寺院群は?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月18日

更新日:2026年10月18日

  1. 文化庁「重要伝統的建造物群保存地区一覧」(令和8年9月1日現在)
  2. 文化庁「伝統的建造物群保存地区」
  3. 文化庁「重要伝統的建造物群保存地区 京都市産寧坂・祇園新橋・嵯峨鳥居本・上賀茂(京都市作成)」
  4. 京都市「伝統的建造物群保存地区」
  5. 京都市「産寧坂伝統的建造物群保存地区保存計画」
  6. 京都市「祇園新橋伝統的建造物群保存地区保存計画」
  7. 京都市「嵯峨鳥居本伝統的建造物群保存地区保存計画」
  8. 京都市「上賀茂伝統的建造物群保存地区保存計画」
  9. 京都市「上賀茂神社周辺エリア(協働版)」(歴史的資産周辺の景観プロファイル)
  10. 京都市「『歴史的町並みの保全再生』のふりかえり」(審議会参考資料)
  11. 京都市「京都市嵯峨鳥居本町並み保存館の運営について」(令和8年度)
  12. 文化庁「重要文化的景観一覧」
  13. 文化庁 文化遺産オンライン「京都岡崎の文化的景観」
  14. 京都市文化財保護課「京都岡崎の文化的景観」(重要文化的景観選定記念パンフレット)
  15. 京都市文化財保護課「京都市内文化財件数」(令和8年4月1日現在)
  16. 京都市観光協会「産寧坂伝統的建造物群保存地区」(京都観光Navi)
  17. 京都市観光協会「祇園新橋伝統的建造物群保存地区」(京都観光Navi)
  18. 京都市観光協会「嵯峨鳥居本伝統的建造物群保存地区」(京都観光Navi)
  19. 京都市観光協会「京都市嵯峨鳥居本町並み保存館」(京都観光Navi)
  20. 京都市観光協会「上賀茂伝統的建造物群保存地区」(京都観光Navi)
  21. 上賀茂神社「アクセス」
  22. 清水寺「アクセス・拝観時間」
  23. 化野念仏寺「拝観のご案内」
  24. 京都市京セラ美術館「アクセス」
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