食と道具

よみすぐき

すぐき

別の表記・呼び方すぐき漬・すぐき漬け・酸茎・すぐきかぶら

冬の上賀茂の畑で、葉の付いた丸いすぐきのかぶらが収穫され、木の漬物樽が並ぶイラスト

ひとことで言うと

すぐき(酸茎)は、京都の上賀茂で古くから作られてきたかぶらの一種と、それを塩だけで漬けて乳酸発酵させた漬物の名前です。独特の酸味が特徴で、千枚漬・しば漬と並ぶ京都三大漬物の一つとされます。11月中旬から1月ごろに収穫して漬け、冬の京都を代表する漬物として親しまれています。

30秒でわかる要点

  1. 上賀茂で作られてきた京の伝統野菜のかぶら

  2. 塩だけで漬け、乳酸発酵させるので酸味がある

  3. かつては上賀茂神社の社家が作り、御所に献上した

  4. 千枚漬・しば漬と並ぶ京都三大漬物の一つ

すぐきは野菜の名前で、漬物の名前

農林水産省の「うちの郷土料理」によると、すぐきは京の伝統野菜のかぶらの一種で、独特の酸味を持つのが特徴です。漬物以外で食べることはほとんどなく、すぐきを塩だけで漬けた「すぐき漬け」は、千枚漬け・しば漬けと並ぶ京都三大漬物に数えられています。同省の「にっぽん伝統食図鑑」は、すぐきは「酸茎」とも書かれ、長らく上賀茂でのみ生産されていたかぶらだと紹介しています。

京都府は「京の伝統野菜」を、明治以前の導入栽培の歴史を持つもの、京都市域に限らず府内全域を対象とすることなどで定義しています。また、同図鑑によると、京都府はすぐきを千枚漬・しば漬とともに「京つけもの」として「京もの伝統食品」に指定しています。

上賀茂の社家が守ってきた漬物

すぐきの始まりには諸説あります。農林水産省の資料は、安土桃山時代に上賀茂神社の社家(神社に奉仕する家)が鴨川に自生していたものを栽培し始めたという説と、京都御所から種をもらったという説などを挙げています。

同省によると、塩だけで漬けるすぐき漬けは江戸時代初期に作られるようになったといわれ、当初は社家だけで作られ、御所へ献上される高級な漬物でした。江戸時代後期には上賀茂神社周辺の農家でも作られるようになりますが、すぐきをほかの村へ持ち出すことが禁じられたため、生産量は限られていました。明治維新を経て普及し、街に広く出回るようになったとされます。

京都府漬物協同組合の理事長が京都市の「京都をつなぐ無形文化遺産」に寄せたコラムも、社家はすぐき漬を宮中などへの贈答品とし、製法を門外不出の秘伝としたため、結果的に栽培面積の広がりが抑えられたと書いています。

塩と室(むろ)で乳酸発酵させる

すぐきの酸味は、乳酸発酵によるものです。農林水産省の「うちの郷土料理」によると、すぐき漬けは下漬け、本漬け、室入れの大きく三つの工程で作られます。室は炭や電気などで約40度にした加温室のことで、室入れで乳酸発酵を促す作り方が現在は一般的です。この方法だと半月ほどで食べられるようになります。

昔は室入れの代わりに「時候熟れ」といって、自然の気温に任せて発酵させていました。この場合はできあがりが春から夏になったため、江戸時代のころには夏の珍味として親しまれていたといいます。今の冬の漬物という印象とは違う時代があったことになります。

すぐき漬の作り方の流れ(一例)

工程内容
下漬け本漬けの前に一晩塩漬けし、翌日洗う
本漬け再び塩で漬け、重石をのせて一週間ほど置く
室入れ火を起こした練炭などで温めた室に一週間ほど置き、乳酸発酵させる
仕上げ自然の気温で冷まし、5〜6日後に漬け汁が上がれば完成
農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 京漬物」の説明をもとに作成。期間や温め方は作り手によって異なります。

いつ、どうやって食べる?

農林水産省の資料によると、霜が降りる季節になるとすぐきの根の糖度が高まるため、11月中旬から1月ごろに収穫して漬けます。年末年始の贈答品としても親しまれています。京都をつなぐ無形文化遺産普及啓発実行委員会の「京の食文化」ハンドブックも、すぐきを千枚漬と並ぶ冬の代表的な漬物と紹介しています。

食べるときは、葉とかぶらを別々に切るのが一般的です。同省によると、葉は細かく刻むか食べやすい長さに切り、かぶらは半月切りかいちょう切りにすることが多く、ご飯のお供のほか、お茶漬けや酒の肴にもされます。室入れには専用の設備がいるため家庭で作ることは少なく、冬になると漬物業者のすぐきが出回ります。

千枚漬・しば漬との違い

京都三大漬物は、材料も作り方もそれぞれ違います。すぐきとしば漬は乳酸発酵させる漬物ですが、千枚漬は昆布や酢とともに漬けるため日持ちせず、繊細な味が特徴です。季節も、すぐきと千枚漬は冬、しば漬は夏の食卓に映える漬物とされています。

京都三大漬物の比べ方

漬物材料作り方・味ゆかりの土地
すぐきすぐき(かぶらの一種)塩だけで漬けて乳酸発酵。酸味がある上賀茂
千枚漬聖護院かぶ薄く削り、昆布・酢などと漬ける。日持ちしない繊細な味聖護院
しば漬ナスと赤シソ塩で漬けて乳酸発酵。赤シソの色と香り大原
農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 京漬物」「うちの郷土料理」、京都市「京の食文化」ハンドブックをもとに作成。

上賀茂を歩くなら

すぐきの産地として長く知られてきたのは北区の上賀茂です。同じ上賀茂にある深泥池のほとりには深泥池貴舩神社があり、京都市の「京都歴史散策マップ7 八瀬 岩倉」によると、その境内には京漬物として有名な「すぐき」発祥の地と伝わる秋葉神社があります。

同じマップは、深泥池貴舩神社を、鞍馬の貴船神社への参詣が遠くて困難だったため深泥池の農民が分社として勧請した神社だと紹介しています。深泥池の名前の読み方や池の歩き方は、この辞典の「深泥池」の項目でも紹介しています。

この項目のミニクイズ

読んだ内容を、2問の四択で確かめてみましょう。

  1. 農林水産省「うちの郷土料理」によると、上賀茂で作られてきたかぶら「すぐき」を漬ける「すぐき漬け」は、何だけで漬ける?

  2. 農林水産省「うちの郷土料理」によると、自然の気温に任せて発酵させる「時候熟れ」で作っていた江戸時代ごろ、すぐきは何の珍味として親しまれた?

出典・確認情報

内容確認日:2026年10月11日

更新日:2026年10月11日

  1. 農林水産省「うちの郷土料理 すぐき漬け(京都府)」
  2. 農林水産省「にっぽん伝統食図鑑 京漬物」
  3. 京都府「京の伝統野菜・京のブランド産品」
  4. 京都をつなぐ無形文化遺産普及啓発実行委員会「京の食文化」ハンドブック
  5. 京都市 京都をつなぐ無形文化遺産 コラム「京漬物は『京の食文化』の引き立て役(川勝康行)」
  6. 京都市「京都歴史散策マップ7 八瀬 岩倉」
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